ツーリングマップルのページ記号は2003年春以降に発売された新版を基準にしています。
同じ南下組のBandit400VユーザーSZさんと少し話し込んでしまい、結局出発の準備を終えたのは午後1時を少し回った頃となった。さて、これからがまたお楽しみ。朝方頑張って稼いだ高度を一気にゼロに戻して、麓のはな阿蘇美までの楽々激走コースが待っている。この約9キロの間はほとんどが坂のはずだから、もしかしたらペダルをいっさい漕がずに今朝の出発地点まで到達出来るのではないかとさえ思えるほどだ。
もっとも我が安物自転車はあまりいいパーツを使っていないので、こんな長い坂をまともにガンガン下ったらブレーキが焼き付くかもしれないから、安全のためスピードをいくらか調整する必要があるだろう。
その前に例のテーブルをふたたび立木にロックしておかねばならない。コーヒーサーバーを入れた小型リュックはハンドルの前にくくりつけた。どうせずっと下りだし、車体の重さが少々増えてもハンデになる事はない。そして坂を下ったらクルマに乗り込み、またここに上がって来てテーブルを回収すればいいのだ。
実はちょっと本音を書くと、もうこのテーブルもだいぶ古いし、鍵をかけずにこのまま放置していれば誰かが持っていったりゴミとして処分されるだろうから、面倒な思いをしてまた戻って来なくてもいいんじゃないか・・・なんて一瞬思ったのだけど、やっぱりそれは非常識というものだ。それをやったら上りの時に谷底で見た数多くのポイ捨てゴミをやった連中と同じになってしまう。少々くたびれてはいるけど、今日1日世話になったテーブル、最初に決めたとおり、ちゃんと家まで持って帰ってあげよう。
大観峰の出口をミルクロードに出て左折すると、少し上りがあってから一気に下り坂となる。ギアは一応トップに入れているが、元々お散歩街乗り用の低いギア設定だから時速30数キロも出せばもう脚がペダル回転に追いつかない。あとは路肩の段差や変なものを踏まないように、十分注意しながら坂を下り始める。
最初はなかば本気でテレビの「ザ!鉄腕!DASH!!」という番組の真似をして「足を着かずにどこまで行けるか?」をやろうとしたが、例のR212への分岐の手前で路面は少し上りになり、その先も平坦な部分がちょっとあったので、結局足をついてしまってアウト。やってみると意外と難しいものだ・・。
もっともこの先の分岐点には一時停止の標識があって、自転車やオートバイはちゃんと足を着いて停まらないと違反になるから、ここで頑張っても結局は同じだったようだ。
午前中とするとずいぶんクルマの量も増えており、しかも下りの直線部分は飛ばして走る人が多いから、ペダルを漕がなくていいとは言え、荒れた狭い路肩でスロー走行を強いられる自転車にはちょっと居心地が悪い。時折クルマの切れ目を狙っては、舗装のいい車道にタイヤを移動し、ザーッとスピードを上げて距離を稼ぐ。
ちゃんとした足回りを持つロードレーサーでも持ってくれば、たぶんファミリーパパの運転するミニバンあたりに後れをとる事はまずないだろうが、今乗っているのは基本的にママチャリと同じ性能の20インチ折りたたみ。安全な所に出るまではガマンガマンである。
そうは言っても下りの勢いはそれなりにあり、右に左にカーブを切りつつも時速40前後を保ちながら、あっという間に高度は下がってぐんぐん駐車場が近づいて来た。結局、朝から休み休み1時間もかかって上って来たこのルートも下りはわずか12分で終了してしまった。
テーブルを回収したのち、帰り道は内牧温泉に少し寄って、そこから阿蘇駅の横を過ぎて阿蘇登山道(坊中線)を上り、阿蘇山上横断コースを取る事にした。たぶん上の方はまだガスっているだろうが、今朝方ほどのひどい状況ではあるまい・・などと楽観視していたらちょっと甘かったようで、標高700メートルあたりから息苦しいほどの一面の真っ白な世界。とてもじゃないが時速10キロ少々の徐行でないと走れない。こんなお天気でも旅行パックのバスが多く上がって来ているようで、真っ白で何も見えない草千里をぼーっと眺めている旅行者が数多くいた。
ツーリングマップル九州P.92阿蘇山3-C 旧版P.40阿蘇4-B
ここから南阿蘇に下るが、分岐の交差点あたりがこれまで以上に濃い雲の中で、ライトを点けていてもかなり接近しないとまるでわからない。窓を開けて音を聞きながら、ほとんどイチかバチかの突っ込みで交差点を右に入ったのち、一路久木野方面へと下りだした。
こちら側の登山道(吉田線)の途中には、阿蘇登山道で唯一のトンネル「火の山トンネル」があるが、これがどうにも照明が暗く、距離も長くておまけに途中でうっすらとカーブしている。今日のようなお天気の日には白いガスが外から入り込むので、いつもよりかなり神経を遣って走らねば側壁に突っ込みそうになる。クルマでこうなのだから、小さなライトしかないオートバイでは生きた心地はしないだろう。
だがこのトンネルを過ぎれば登山道も一気に標高を下げるから、少々カーブは多いが気疲れは少なくなる。途中にある休憩所に寄ったら、ここでもパラグライダーの集まりがあったようで、いつもはガラガラの駐車場もビッシリと埋まっていた。しかし空を飛ぶ姿を一度も見なかったし、結局はこの悪天候でどこのイベントもダメだったのかもしれない。
南阿蘇村(旧久木野村)からはいつもの俵山越えコースと行こう。オートバイでなくてもこの道を走るのはとても楽しいものだ。途中マグマラーメンという、その筋では有名らしいお店を道の右側に見つけた。先ほど大観峰でSZさんと話していた時にここの話題が出て、次回はここでオフ会をするのもいいね、なんて言われていたのを思い出した。味もさる事ながら、何やら変わったメニューがあるらしく、ひとつ話のタネに寄ってみようかと思ったが、どうやら駐車場は満杯の様子。とりあえずここは次回のお楽しみにとっておくとしよう。
ツーリングマップル九州P.92阿蘇山5-A 旧版P.40阿蘇6-A
俵山に向かってだんだん標高が上がり始めるあたりで、前方にロードレーサーの一群が走っているのが見えた。10台ほどの集団を形成して、上り勾配をけっこうなペースでこなしている。近くでよく見るとパーツはどれも最新のものが付いているし、相当気合いが入っているグループのようだ。
そう言えば今回の阿蘇山内で、作者の他に自転車で走っている人に会ったのはこれが初めて。本格的なロード練習や坂道上りはともかく、最近流行の折りたたみ自転車をクルマに積み込んで清々しい高原地帯を走り回っている家族連れはそこそこいるのでは、と想像していたのに、どこの駐車場でも全く見なかったのはちょっと予想外だった・・。
うまく使えば最高に面白い相棒となってくれる自転車。ガソリン価格高騰の昨今、日常の足やレジャーのお供として、もっと見直してやってもいいんじゃないだろうか。
先頭交代をしながら息も乱さず高速巡航する彼らを後に、すっかりガスの晴れた俵山を一気に越えて、鹿児島方向へと連絡するR443を目指して空港バイパスへ入ってゆく。次回阿蘇に来る時は、先ほどのレーサー達ほどではないにしても、もう少し本格的な自転車に乗って思いきり走れたらいいなぁ・・。
おしまい