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日帰り佐多岬

ツーリングマップルのページ記号は2003年春以降に発売された新版を基準にしています。

2002年10月18日

第1ゲート

ロードパークのゲート

標識にしたがって右に入ると、すぐそこにロードパークのゲートが見えてくる。

ツーリングマップル九州P.63佐多岬7-A 旧版P.86佐多岬6-A

川内市の図書館でこのロードパークが開通した当時の資料を見た事がある。今のようなアスファルトではなく、路面には小砂利を敷き詰めてあったが、このゲートだけは現在と同じ物だったのでちょっと驚いた。何十年前だったかは憶えてないが、それ以来ずっと更新されないままらしい。

ゲートの窓口ではエプロン姿のおばちゃんが受付をしており、どうやらまだ通れるみたいだ。400円を出しながら、ロードパークの廃止はどうなったんですか?と訊いてみる。おばちゃん曰く、『会社(企業グループ)からはまだ何も言ってきてないから、当分はこのままだと思うよ』との事。ちょっと頼りない感じだが、このおばちゃんを詰問してもしかたがない。タンクバッグにチケットをしまい込み、陽光まぶしいロードパーク内へ入ってゆく。ここのゲートで貰えるチケットは2枚分割式で、途中にある第2のゲートで半分をもぎるようになっているので、無くさないように注意。

ロードパークのチケット

久しぶりに走る道だが、あいかわらずひ弱そうな舗装で、あまりとばす気になれない。いちおう40km制限だけど、それでも相当きついのではと思うようなカーブも多い。道沿いにはソテツやヤシの木、色とりどりの熱帯性植物が見られるが、県内の他の公園などと同じく、ほとんどが人の手で植林されたもの。一応この辺りはソテツの自生地となっているのだが、自生種はこんな道ばたにボコボコ生えたりしない。この先の田尻集落の港あたりで、自然な姿を見る事が出来る。

南の島のような風景

ガジュマルなどもポツンポツンと生えているが、本来の自生北限はずっと南の屋久島にある。こういったいかにも南国的な演出は、地元県人から見ても違和感を感じずにはおれない。

途中に1箇所、短めのトンネルがある。照明はなく、中は真っ暗。向こう側がすぐ先に見えているとはいえ、かなり不気味な感じ。このトンネルを抜けるとすぐ左に急カーブがあり、ヘタすると転落の危険もある。その他、路肩には照明設備がほとんどない。夜間は閉鎖するから照明は不要と考えているのか、それとも照明がないから夜間通行が許されていないのか・・。正直よくこれで自動車道としての認可がとれたものだと思う。


第2ゲート

田尻の第2ゲート

クネクネした道を下ってくると、周囲がひらける。途中にある田尻集落の港だ。じつはゲート横から入る裏道を通って、ここまでは無料で(自転車や徒歩でも)来る事が出来るのだ。しかしここから先には第2のゲートが待っている。さっきのチケットの半券を渡し、先へ進む。

裏道を通ってここまで来たとしても、やはり第2ゲートで400円払わないと、先へは入れさせて貰えない。ゲートの手前には、さも当然のごとく自転車・徒歩での立ち入りを禁ずる表示がしてある。せめてここから先、ほんの1,2kmの間だけ歩道を整備してくれればと思うのだが・・


第3ゲート

トンネル

田尻から最終地点まではさほどの距離はないが、あいかわらずアップダウンがきつい。途中左側には北緯31度線を示すモニュメントが建っている。ここからは本土唯一の北緯30度台となる土地だ。とはいっても私の川内市の家が31度49分にあたるから、1度ぶんも違わないのだけど。かつて冒険ライダーの賀曽利さんが言っていたが、東北の秋田〜岩手を通る北緯40度線はそれだけで観光客が多く来るという。もしここがピッタリ30度線だったなら、それなりの大観光地になっていたかもしれない。実際の30度線は遙か洋上、屋久島の南を通っている。

私が思うに、もしここが対岸の指宿のような温泉地だったなら、すばらしく賑やかな街になっていただろう。同じ鹿児島ながら、こちら大隅半島の先端部にはどういうわけか天然温泉がないのだ(※注2-1)

31度線を越えてすぐ、行き止まりの駐車場がある。いつかの北上ツーリング以来、こういう先端物件に来てまずやる儀式といえば、駐車場のいちばん奥にバイクを置き、本土最南端バイクにしてみる事。でもあまり感動はない。本当はもっと自由にもっと南に行けるだろうに、いち企業の都合で縛られているからだろう。

ツーリングマップル九州P.63佐多岬(右隅図)7-J 旧版P.86佐多岬6-A

トイレの向こう側はゴミだらけ

山が間近に迫って閉塞感のある駐車場は、平日とはいえ車も少なく寂しげな雰囲気。トイレの向こう側にはゴミを焼く窯があり、その先の林の中にたくさん散らばっている投棄ゴミの山を見てがっかりする。なんだか、そこらの山の上にある雑草だらけの公園施設とたいして変わらない気がする。入り口で徴収した400円は、いったい何に使われているんだろう?

このトンネルから先は徒歩となり、入り口の小屋で100円徴収。どうせならゲート料金を100円増やせば、こんな小屋も要らず、人件費も減らせるだろうに。この先は遊歩道やら展望台、日本最古の灯台(※注2-2)などがあり、確かに眺めもいいのだけど、南端である事以外、特に書くべき事は見つからない。この先の模様を知りたい方は直接出向かれるか、またはネット検索すれば佐多岬の旅レポートは無数にあるので、そちらを参照いただきたい。


最南端の駐車場

もうひとつの道

田尻の港

第2ゲートまで戻り、田尻の港に降りてコンビニ弁当を広げる。この日はちょっと風が強かったが、日ざしも強く、気持ちのいいお昼だった。この港までは自由に通行出来るというのは先に書いたが、じつはここから岬の最南端へ行くもうひとつの”道”がある。一部のバックパッカーの間では秘かに語られていたものだ。

といってもべつに大げさなものではない。この港から海沿いに海岸線を歩いて、佐多岬の先端まで行く方法があるのだ。地元の釣り人もよく利用する道で、海岸線なら社有地から外れるから、違法でもないというわけ。

しかもこのルートなら柵で囲われた展望台よりもずっと先の、まさに陸地のつきる先端部まで行けるらしい。つまりこちらの方が真の最南端というわけだ(※注2-3)

歩いて片道約1時間半、もちろん途中に売店や自販機なんかないだろうが、自分の足で南端へ行きたい!という情熱があるなら、トライしてみる価値はあるだろう。


※注2-1 最南端の温泉
地図で見る限り、本土最南端の温泉は指宿の開聞温泉のようだ。山川の海岸にある有名な砂むし温泉よりさらに南に位置している。湯治場の雰囲気のある素朴な浴槽にうす茶色の湯、いい雰囲気なので、ぜひ一度は訪ねてみて欲しい。
ツーリングマップル九州P.62開聞岳2-J 旧版P.85開聞岳1-F
※注2-2 日本最古の灯台
正確に書くと、慶応2年(1866年)に米・英・仏・蘭の4カ国との間に結ばれた江戸条約に基づいて設置された日本初の西洋式灯台群のうちのひとつ。佐多岬の他に観音埼や潮岬などがあり、厳密には明治2年(1869年)に完成(初点灯)した観音崎灯台が、日本最古の洋式灯台とされる。初代の佐多岬灯台はイギリス人の設計により明治4年に完成。その後昭和20年に空襲で焼失し、現在の灯台は昭和25年に再建されたもの。岬の展望台からかなり離れた島の上にあり、一般人は立ち入る事は出来ない。
※注2-3 もうひとつの道
アウトドア雑誌BE−PAL(小学館)の連載コラム「シェルパ斉藤のいきあたりばっ旅」2002年10月号掲載分にて紹介されている。詳しい情報は田尻の港にある「さたでい号乗り場」でも得られるハズ。挑戦してみたい方は、山歩きトレッキングの装備と心構えでどうぞ。もちろん天候には要注意。
記事の著者でもある斉藤氏はなんと佐多町長とも会談し、この海岸線ルートを公式に認め、広く認知してもらえるように努力する、との約束まで取り付けている。ロードパークの将来が揺れている今、旅人には心強いニュースだ。
(参考:佐多岬・最南端へ続く道 2002年11月18日