ツーリングマップルのページ記号は2003年春以降に発売された新版を基準にしています。
最南端の佐多岬にはもう行けなくなる・・地元鹿児島で春頃からこんなニュースが聞かれるようになった。コトの起こりは今年3月。地元の企業グループ”Iコーポレーション”が前年から進めてきた不採算部門のリストラ策で、まず薩摩半島と大隅半島の先端を結ぶ山川〜根占フェリーを廃止。それにあわせて佐多岬ロードパークも休業(閉鎖)する方針を打ち出した事による。実は佐多岬はこの企業グループの所有する社有地なのである(※注1-1)。
これまで幾多の旅人の前進を阻み、”悪名高き”とすら冠される佐多岬ロードパーク。その主な理由は「通行可能な時間の制限がある事」そして「徒歩および自転車での通行を禁止」している事だ(※注1-2)。遠路はるばる最南端めざして旅をしてきたバックパッカーや自転車ツアラーは残りわずか数km、最後の最後で大きな失望を味わう事になる。陸続きなのに自分の足で進めない理不尽をかみしめ、ある者はこんなゲートさえなければと看板にケリを入れ、ある者は不本意ながらバスのキップを買う。
なんで歩きや自転車はダメなのか?
お役所から自動車道としての認可しか受けていないとか、認可を受け直そうにも道幅が狭くて歩道の整備が困難とか・・理由は様々だが、要するに岬まで行きたければ車かバイクでいらっしゃい、という事なのだ。
それにバイクで旅する我々にも不満がないわけではない。道幅が狭く、ロクな舗装もされてない僅か8kmの山道に400円はちと高い。誰でもタダで通れる佐多町内の県道の方がはるかに立派な造りだ。それに普通の有料道路は「趣味の乗り物・自動二輪」と「生活の足・原付」の料金は多少差をつけるものだが、なぜか排気量の区別がいっさいなく、50ccのカブ号も1,200ccの巨大ハーレーもおしなべて同額ってのも納得行かない。そして車やバイクで入っても、行けるのは岬手前のトンネルのある駐車場まで。そこから奥へはなんと逆に徒歩でしか行けず、またそこで通行料の100円を徴収されるというしくみ。
これだけ並べれば、悪名高き・・などと言われるのもムリないか、と思ってしまう。だが、その佐多岬も経営母体の方針により、通行そのものが出来なくなるとしたら、これはちょっとした事件ではないか。
そして今年9月、ついに山川〜根占フェリーの廃止が決定(※注1-3)、新聞の記事どおりなら佐多岬もヤバイ。地元民ながら、あまり行く機会のなかった佐多岬に、ちょっと顔出ししてみようと思った。
私の住む鹿児島県川内市から佐多岬へは、陸路で約180km。日帰りツーリングには程良い距離感である。鹿児島市から桜島へフェリーを使って、錦江湾をショートカットする手もあるが、今回はひとつオール陸路で行ってみよう。
まず錦江湾の真北、隼人町から国分市へR10を走り、検校橋の交差点から右に入る(感覚的には直進か)。
ツーリングマップル九州P.52国分7-E 旧版P.74国分4-D
そこからR220で錦江湾ぞいに南下し、約120km彼方の半島先端を目指す。一部狭い部分もある片側1車線道だが、このあたりはまだ通行量も少なく、50km規制が外れる区間もあるので快走出来る。
右手に見える桜島が間近に迫ってきたら、そろそろ左折。大正3年の大噴火で大隅半島と桜島が陸続きになった根本あたりで、R220は左に90度向きを変え、さらに南へと延びていく。
垂水市からやや北あたりでは、ちょっと前に高倉健主演の映画でロケが行われた場所があり、そこかしこに”ホタルの云々・・”といった看板が目につく。垂水を過ぎれば、大隅随一の都市・鹿屋市まではもうすぐの距離だ。このあと注意すべきは、このままR220を道なりに走っても佐多岬には行けない。鹿屋港あたりで三差路の信号を右に折れ、県道68号に入らなくてはならない。
ツーリングマップル九州P.60鹿屋2-E 旧版P.83鹿屋1-C
そのまま道なりでも行けない事はないのだが、この三差路を過ぎると鹿屋市街地に向かって登るキツい坂があり、その先の分岐もややこしくて一筋縄ではいかないので、地元の方以外はおとなしく海沿いの県道に向かおう。ちょっと狭いが海沿い気分を満喫出来る県道68号からR269へ入り、あとはそのまま一直線に南下コースだ。
道の駅根占を過ぎてトンネルをくぐるたび、周辺の雰囲気がちょっと違って見えてくる。山のシルエットは異様な曲線を描き、海の色はいよいよ濃く青い。
田之岬の街中で道なりに左に曲がり、ここから先はロードパーク入り口の大泊まで山岳路となる。小排気量車にはちょっと苦しい長い登りが続くが、山間からときおり覗く青い海がいっそう美しく見える。
大泊集落に入り、最南端のGSを過ぎれば佐多岬ロードパークの入り口はもう目の前だ。
フェリーも廃止された今、はたしてまだ通行可能なのだろうか?
ツーリングマップル九州P.63佐多岬7-A 旧版P.86佐多岬5-A
2006年1月13日追記 最初の第1料金所から第2料金所までの区間に限っては、企業側が所有権を地元自治体に条件付きで譲渡し、一般道化される予定。
2007年4月26日追記 佐多岬ロードパークはこの日をもって廃止され、大泊の第1ゲートから田尻の第2ゲートまでの約6キロの区間は町道として南大隅町(旧佐多町)へ寄付された。これにより第1ゲートから道路終点の駐車場まで、全線に渡って無料化、自転車や徒歩での通行も自由に出来るようになった。ただし第2ゲートから先は時間制限あり。終点の駐車場から展望台への遊歩道は従来通り有料。
(参考・自転車漕いで佐多岬 2007年5月2日)
2012年10月30日追記 佐多岬ロードパークはこの日をもって全区間が南大隅町所有の一般町道となり、ごく普通の道として完全無料化された。
2006年1月13日追記 あれから紆余曲折あり、2005年12月より半年間の期間つきながらフェリー運行が再開された。しかし将来的にどうなるかはまだ未定のもよう。
2006年6月6日追記 2006年5月17日付の地元紙報道によれば、山川〜根占フェリーの運航期間は2006年11月6日まで期間延長されたとの事。その後はフェリー船体を県が買い上げて企業側(岩崎グループ・鹿児島商船)にリースする形で航路継続させるなどの案も出ているが、まだ決定ではないらしい。
2006年10月21日追記 岩崎グループは鹿児島県、指宿市、南大隅町との協議に合意、フェリー本体は両市町が購入して岩崎側にリースする形で運航も委託、山川〜根占両港に岩崎が所有する土地と施設は県有地と交換する形で県が取得する形となり、同年11月1日より新しい体制が始まる。これにより当面は運行停止のような状況は回避されると思われる。
ちなみに運航は平日4往復、土日5往復となる見込み。経費を抑えるため平日は現在より1往復減る。