おとなりの熊本県を代表する川、球磨川ぞいに作られている大規模自転車道、球磨川サイクリングロードをご紹介します。人吉市の中心部から球磨郡湯前町までをほぼ東西に走る、約30キロの行程。正式名称は一般県道湯前人吉自転車道線といいます。
球磨川サイクリングロードの公式なスタート地点は、市街地の中心部にある人吉駅。
駅前広場にはお城の形をしたからくり時計があって、毎正時になると太鼓の音と共にゆっくり扉が開き、人形がお囃子にあわせてユーモラスに動き出す仕掛けが楽しいです。
駅の中にある観光案内所では、サイクリングロードのルートマップや、周辺の観光スポットが詳しく載っているパンフレットがいろいろもらえるので、初めての人はぜひ立ち寄ってもらいたい所です。
まず駅を背に、正面の道をまっすぐ南下します。
そして3つめの信号交差点で国道445号に突き当たったら、そこから五木・水上(みずかみ)方面へと左折。
あとは、しばらく道なりです。
ちなみにこの交差点を右に行くと、国宝として名高い青井阿蘇神社がすぐ近くにあります。
ところで・・。
人吉駅周辺は食事をしたりおみやげを買ったりするにはいいですが、車や人で常に混み合っているので、自転車を楽しむサイクリングロードとしては・・正直あまりお勧めではありません。
というわけで、作者はもっぱら人吉駅から南東に1キロほど離れた所にある、人吉城址をベースに走り出す事にしています。
球磨川のほとりに建つ昔の城跡で、春には花見客で賑わう桜の名所。すぐ近くには観光用駐車場もあって、車で来た時にはすごく便利なのです。
観光用駐車場は誰でも無料で利用出来、時間制限も特にありません。お花見やお祭りの時期を除けば、週末でもだいたい空いています。
湯前まで往復して汗びっしょりで帰ってきても、すぐ近くに元湯という昔ながらの雰囲気の温泉があるのがお気に入り。料金もたいへんリーズナブルです。
駐車場を出たら、城址のそばに架かる水ノ手橋で球磨川を渡り、市街地方向へと向かいます。
橋を渡ったら国道445号に突き当たりますので、ここの五日町交差点から右方向へと曲がります。
ここからが球磨川サイクリングロードの公式ルート。
道幅はぐっと狭くなり、路側帯の上も電柱だらけ。車の往来もかなり多く、自転車には肩身の狭い道が続きます。
特に途中のS字カーブは向こう側が見えない危険箇所。歩行者にも十分注意しながらゆっくり進みます。
カーブの先には、有名な球磨川下りの発船場があります。
肥薩線の踏切を渡ると、国道445号はすぐ左に折れますが、自転車道のルートは道なりにまっすぐです。
坂道を上がって最初の信号のある願成寺町(がんじょうじちょう)交差点から、横断歩道で右へと渡ります。
ここは九州自然歩道との交点。橋のたもとに案内板が建てられています。
曙橋のゆるやかな坂を下りながら、球磨川をもう一度向こう側に渡り直します。
正面に見えるのは、九州自動車道の高架橋です。
橋の上からは、眼下を流れる球磨川と肥薩線の鉄橋、その向こうには人吉城址の森と市街地の雄大なパノラマが広がります。西向きなので夕暮れ時の眺めは特に素晴らしいです。
自転車を走らせて楽しむサイクリングロードが実質的に始まるのはこの辺りから、と作者は捉えています。
以前、地元の人にお話を伺った所、自転車を渡し船に乗せて球磨川を渡り、混雑する市街地を迂回させてはどうか・・という大胆なルート構想が計画段階であったそうですが、残念ながら実現には至らなかったようです。
それでは、湯前駅を目指して走行開始!
ここからしばらくの間、一般道の歩道と兼用になります。
さっきまでの市街地中心部とは打って変わって広大なスペースで、人通りもほとんどありません。逆に幅が広すぎるせいか違法駐車除けの車止めの柱がやたらと多く、ちょいと邪魔な感じです。
短い坂を上がると、信号のある大きめの交差点に出ます。ここの矢印看板の指示に従い、左方向(東)へ横断歩道を渡ります。
ここは車道左端を走っていると案内看板を見つけにくいので見逃しやすいポイントです。作者も最初に走った時は気づかず素通りしてしまいました。
交差点を渡った先にはサイクリングロードの全行程と距離を示した大きな看板があります。道はまだ始まったばかり、のんびり行きましょう。
広い歩道の上をずんずん進みます。
車道に出て走ってもいいですが、人吉市街地から国道への抜け道的な役割があるためか、細い道の割に交通量はそこそこあり、ドライバーも結構飛ばしていますので注意が必要です。
球磨川の支流、鳩胸川の橋を渡り、道が少し上り坂にかかりはじめた所にある横断歩道の手前に、右折ポイントを示す矢印看板が立っています。ここから道を右に渡り、車止めを抜けて山林の中へと入ってゆきます。
ここもうっかり見逃す人が多いようです。一応まっすぐ行っても再びルート上(国道219号)に出られるのですが、その前に少々長めの坂を上るハメになります。
木漏れ日の中、ゆるやかな坂道を進みます。道はしっかりと舗装されていますが、場所によって木の葉や枝が多く落ちているのでスリップには注意です。
この道には車が入って来れず、人の往来も少ないため、路面にコケが生えやすく、雨の日はいっそう滑りやすくなるので、用心して進んでください。
特に茶色く塗られたコンクリート鋪装の部分は要注意で、立ち漕ぎをしただけでもタイヤがズルッとすくわれてバランスを失い、非常に危険。以前、作者もここで転んでクロスバイクの部品を壊してしまった事があります。
人吉市街地から5キロ弱、道は再び鳩胸川を渡って国道219号へと出ます。
ここにある矢印看板の案内に従い、ルートは左に折れます。
道路をはさんで正面に見えるのが道の駅 人吉(人吉クラフトパーク石野公園)。売店、食堂、レンタサイクル、キャンプ場まで備え、水場や男女別水洗トイレも完備。
2019年9月19日追記 2019年8月10日に正式に道の駅となりました。同日、国道219号沿いに九州自動車道・人吉球磨スマートICが開設、道の駅 人吉と関連した一時退出の社会実験(※1)が行われています。
ここからしばらくの間、国道219号沿いを東に進みます。
ゆるやかに坂を下ると、国道219号からえびの市方面へ向かう国道221号との分岐点が見えてきます。ここを右方向に行けば、ドライブの名所として有名な人吉ループ橋があります。
国道はこのあたりから少し上り勾配になります。少し先に横断可能な信号交差点があり、道の向こう側にはコンビニやショッピングモールが集中しているので、買い出しに便利です。
この先に控えている球磨川沿いのメインルート上にはコンビニや売店は一切なく、自販機の類も設置されていません。周りは基本的に田舎の田畑ばかりなので、近くで買い物が出来る場所は限られています。
途中5〜6キロ毎に5カ所ある休憩所では水道やトイレが使えますが、日よけや雨宿りの出来る場所はそれ以外では橋の下くらいしかなく、真夏の炎天下に最後までぶっ通しで走るのは初心者にはきついでしょう。熱中症予防のためにきちんと帽子やヘルメットをかぶり、出来ればこの国道沿いで補給食やジュース類を購入しておく事をお勧めします。
人吉クラフトパークから2キロほど進んだ所で、ふたたびサイクリングロードの距離表示のある大きな看板と、左折を示す矢印看板が現れます。
ここで国道219号とはお別れ。いよいよ球磨川本流沿いのメインルートへと向かいます。
球磨川の支流、小纚川(こさでがわ・さでは糸へんに麗)に沿って、ゆるやかなカーブを進みます。
正面右側に橋が見えてきたら、路面の案内どおりに右へ折れ、橋を渡ります。
交差点がちょっと複雑なのに加え、ここを通る車はわりと勢いよく走ってくる事が多いので気を付けてください。
県立球磨中央高校のグラウンドを右手に見つつ、道なりに進んで踏切を渡ります。
2017年9月2日追記 旧名は球磨商業高校。近隣校との再編統合にて平成29年4月より球磨中央高等学校となりました。
すぐそばにはくま川鉄道の肥後西村駅(ひごにしのむらえき)があります。
木綿葉大橋(ゆうばおおはし)に続く車道の下にある小さなトンネルをくぐって、球磨川沿いに出ます。
トンネルの壁には、近くの学校の生徒が描いた、球磨川の自然の情景をモチーフにしたカラフルな壁画があります。時間があったらゆっくり鑑賞してみてください。
人吉市街地から約8キロ、ようやく本格的なサイクリングロードに出ました。あたりには視界をさえぎる大きな建物もなく、人吉盆地の周囲を囲む山々がよく見えます。
さあ、思う存分走りましょう!
2021年3月23日追記 2020年7月の大水害で、サイクリングロードも木綿葉大橋近くの一部に被害が出ました。復旧工事はすでに始まっており、並行している車道で迂回可能です。
2023年3月26日追記 崩壊していた路盤は復旧し、通行可能となっていました。
(※1) 一時退出の社会実験
九州自動車道・人吉球磨スマートICから出た後、3時間以内に道の駅 人吉に立ち寄り、再び人吉球磨スマートICから高速に戻って、出る前と同じ方向に走った場合、最終目的地までの高速料金が、途中で降りなかったのと同じ金額に割り引かれます。但し、これを利用するにはETC2.0対応の車載機が必要。
参考:国土交通省プレスリリース・高速道路からの一時退出を可能とする「賢い料金」の実施について(PDF)