日頃自分でバイクをいじらない人も、最低限の車載工具くらいはリアシートの下に入っているでしょう。
作者のBandit250は約2年間雨ざらしのまま放置されていた不動車でしたが、幸いにも(?)前のオーナーが機械整備に無頓着だった事もあって、リアシートの下でまったく手つかずのまま保管されていました。
車載の純正プラグレンチなどは、イマイチ使いにくいから市販のレンチを買っているという人も多いようですが、このスペースに収まって持ち歩けるサイズの工具としては、やはり純正はよく出来ているなと思います。しかしBanditに限らず国産車の伝統というべきか、根本的に材質が安っぽいですから、可能な限り市販のもう少し品質のいい工具と差し替えるようにしています。
出先ではあまりお世話になりたくない工具類ですが、いざという時のために備えておきたいものです。
(強調文字は追加または交換したものです)
プラグレンチはパイプと板メガネレンチを組み合わせて使います。元々Bandit250はプラグ周りが狭くて作業しにくいのですが、必要最低限の機能を限られた収納サイズで実現しているという点では、純正の車載工具に勝るものはないでしょう。後期型250にも問題なく使えます。
以前、後期型250Vに乗っていた友人がツーリング先でプラグ交換をしようとした際、車載のプラグレンチがなぜかワンサイズ大きなものが入っていて全然使えなかった事がありました。たぶん前のオーナーかバイク屋さんが間違えて別の車種用レンチを入れてしまっていたのでしょう。普段の整備はバイク屋さん任せという方も、念のため一度は車載工具の中身をチェックしておいた方がいいですね。
前輪のアクスル(心棒)はこの巨大な12ミリ六角レンチで回しますが、レンチ単体では柄が短くて力が入りませんので、プラグレンチの細い方を柄に差し込んで延長して使います。
まぁツーリング先で前輪を外さねばならない状況に出くわすかどうかは微妙なところですが(^^;)、このサイズの六角はホームセンターにもちょっと置いてないので、とりあえず入れてあります。
リアサスのスプリング調整に使うカギ爪状の工具はクランプレンチと呼びます。これも柄が短いので、パイプをつぶしたようなエクステンションパイプを差し込んで延長して使います。重い荷物を積んだり二人乗りをする時、これでリアサスのスプリングをワンノッチ上げるだけでずいぶん楽になります
エクステンションパイプはこれ以外にも22ミリの板メガネレンチなどの延長に使えます。どちらかというと使う機会は少なく、車載スペースを圧迫する邪魔者ですが、組み立て式ドライバーの軸や六角レンチを中に入れるなどしてスペースを稼ぎます。
純正のスパナはあまり品質がよくないので、ホームセンターで買ったKTC製のコンビネーションレンチと交換しました。オープンスパナよりはメガネの方が安心感がありますが、ワイヤー調整部やバックミラーのようにオープンでないと回せない部分もありますから片側メガネがお薦め。22ミリは市販モノでは長いのしか売ってなかったので純正の板メガネレンチのままです。
一番出番が多いのはバックミラー調整での17ミリオープンでしょうか。ミラーのステーを何かの拍子にこづいて回してしまった時、特にミラー根本にハンディGPSやデジタル水温計なんかの支持台を共締めしている場合、これがないと固定が面倒。なぜかこの17ミリオープンを純正で備えていないバイクが多いみたいで、たまに出先でも重宝されます。
スパナ類と同じく、六角レンチも市販のボールポイント付きの長いタイプに換えています。エクステンションパイプの中にちょうど収まるのでスペースはあまり変化しませんでした。
純正でもプライヤーは入っていたと思いますが、あんまり程度がよくなかったので新しいのに差し替えています。ついでに電気工事屋として個人的に使い慣れているラジオペンチも追加。プライヤーよりも電線の被覆を剥くのが楽だし、針金の端を小さくしぼったり、要(カナメ)の下の部分を圧着ペンチ的に使ったり、せまい部分にナットが落っこちたときにつまむのにもいいです。本当はやっちゃマズイけど握り部分がビニールだから家庭内や車庫での電灯線周りの加工も可能。
タイラップ(結束バンド)は自宅はもちろん出先でも使う機会がけっこうあるもの。配線をいじる時はビニールテープもないと困ります。コンビニでも売ってますが、ほんの数センチ欲しいだけなのにまるまる1個買うのもアホらしいです。丸いままだと入らないので半分くらい使ったやつをつぶしてすき間に押し込んでいます。ちょっと前までは携帯用のガス式半田ごてまで入れていましたが、さすがに使う機会はほとんどなく、今はレギュラーから外しています。
ネジ類は各サイズを適当に。ラジエータホースのバンドを入れているのは、以前バンドがサビで切れて水漏れを起こし、自走不能になって自宅まで何キロか押すハメになった経験から。まぁ気休めというかお守りみたいなもので、かわりに針金やIV線でも十分。黒いのは家庭用の屋内配線に使う2.0ミリIV線で、緊急時の縛りつけ用に50センチほど入れています。
ヒューズが切れた場合は配線のどこかに原因があるわけで、それを取り除かない限りは新品に替えてもまたすぐ切れますが、これが切れたり切れなかったりと、故障箇所がはっきりしない場合もあって、特に夜間や雨の日はチェックしにくく大変。そんな時は手持ちのヒューズの本数が明暗を分ける事になります。切れたら次々に換えて走り続け、帰宅するまで持てばいいわけ。もちろん針金直結は電子部品がパンクしたり火災を起こす危険がありますから禁じ手です。
通常、車載工具の袋はリアシート下のテールランプのそばにゴムバンドで固定してありますが、上から入るのか下から巻き込むのか、ここには意外と水が入ってくるようで、作者のBanditも雨中走行の後では中によく水たまりが出来ていました。おまけに純正の工具袋は例の安っぽいビニール製なのでたまった水が抜けにくく、放置していると中の工具がサビてしまいます。じっさい初めてここを開けた時、中の工具は下半分が真っ茶色でした。
そこでこのトレイの隅に小さな水抜き穴を開けてあります。走行中に入ってしまう分はしょうがないとして、少しでも早くたまった水を抜くため。駐車中に抜けやすいようサイドスタンドで傾く左側の隅っこにキリでブスッと1ヶ所。ついでに工具袋も布製の巾着しぼりを作ってもらい、袋に水がたまる事がないので乾きも早く、結果サビも出にくくなったと思います。現在はフロントシート下の小物入れに車載工具を移しているのでこのスペースは使っていません。
リアシートの下にはチューブレスタイヤのパンク修理キットをビニールにくるんで入れています。これと合わせてオフロードバイク用品として売られていた小型のエアポンプをシートレールの裏側にバンドで固定。穴に水や砂が入るとピストンがきかなくなるのでビニール袋で巻いてから縛ります。
こういうチューブ入りのゴムのりは、いったん封を開けたら少々余っても次回にとっておこうなどとは思わず、新しいのを買った方がいいです。しっかりとフタをしめたつもりでも、いつのまにか蒸発してしまい、いざという時カラカラで使えなくなっている事があるから。保管という点では缶入りの大きいタイプがベストですが、あんなデカイのを持ち歩くのもアホらしいですしね。
パンク修理キットといっしょに入れているコードはバッテリーから直接電源を取り出す時に使うシガーソケット。バッテリー側にも別途配線を施し、サイドカバーの裏あたりにコネクターを引き出してありますので、必要なときに取り出して繋げば携帯やデジカメの充電くらいは可能です。もっとも2001年の長距離ツーリング以降、ほとんど使う機会はありません。
数ある車載工具の中で唯一工具袋の中に入っていないのが、シート裏にある4ミリの六角レンチ。リアシート下の車載工具を取り出す時、シートを固定しているキャップビスを外すのにこれが必要だからですが、それ以外にもサイドカバーやキャブのドレンネジなど、各種六角レンチの中では使う機会がダントツに多いものです。
しかし純正の短いレンチのままではちょっと使いにくいので、こちらも市販の長いものに交換しておくといいでしょう。先端がボールポイントタイプなら、奥にあるキャブのドレンも回しやすいです。そのままでは隔壁が邪魔でホルダーに固定出来ませんので、ドリルか何かで貫通穴を開けておきます。
こうして書き連ねてみるとけっこうな量になりましたね。まぁ別に未開の荒野を走るわけではないので、こんなに詰め込まなくても必要最小限のもので十分です(たぶん純正の袋にはここまで入らないでしょう)。困ったらガソリンスタンドやバイク屋さんに寄ればいいのですから。そのうち「これは要らないや」「あれがあると便利だな」なんて風に加えたり引いたりしていけば、自分なりのスペシャルセットが自然と出来上がっていくはずです。