本屋さんで売っているバイクメンテナンスの教則本を見ていると、キャブの項目には必ず「パイロットスクリュー(PS)の戻し量を云々・・」という記述が出てきます。
アイドリングが不安定だったり、低速の立ち上がりが調子悪いときなどに調整しますが、キャブボディのすぐ外側に付いているので、キャブ同調などよりもずっと簡単に、いつでもいじる事が出来ます。季節毎の気温変化でいろいろ調整している人もいるようです。
Bandit250の場合、写真のようにチャンバー前側中央、インレットパイプ(エンジンとキャブを繋いでいるゴムのパイプ)の根本部分、円筒の奥に見える銀色のマイナスネジがPSです。
普通の工具ではちょっと回しにくい場所にあるため、本来ならば直角に曲がって回転する特殊なマイナスドライバーを使います。
さいわい初期型Bandit250のキャブは前傾のきついダウンドラフトで、一般のホリゾンタル(水平)キャブに較べて下部の空間が広くなっていますから、どこでも普通に買える小型ドライバーを使って、なんとか調整してみましょう。
まずドライバーに油性マジックでマーキング。柄の部分に実線でまっすぐラインを引きます。
くるっと回して180度反対側には点線を引きます。これはキャブ下部の奥の方で使う時、何回転したかを真横から見て分かりやすくするためです
キャブの下部にあるPSの穴にドライバーの先端を入れ、穴の中にあるPSのマイナスのミゾと噛み合わせます。
うまく入ったら、ドライバーのおしりを指で押さえ、PSに対して垂直になるよう支持します。
これで準備OK!
もう一方の手でドライバーの柄の部分をつかみ、ゆっくり回転させます。
まず、締まる向き(ドライバー側から向かって時計方向)にゆっくり回し、PSを締め込みます。
そしてクッと軽い抵抗を感じたら、そこで止めます。
普通のネジみたいにギュッと締め込んではダメ。PSの先端は針状になっているので、力を込めると針先を潰してダメにしてしまうおそれがあるからです。
一番最初は、締まるまでどれくらい回したか(例えば1回転と2分の1、など)を各気筒毎にメモしておきます。これをやっておけば、いつでも調整前の状態に戻す事が出来ます。
そして、締めた状態から規定量だけゆるめて戻します。マニュアルによれば、初期型Bandit250の規定戻し量は約1回転とあります。
微調整はエンジンをかけた状態で、左右2分の1回転くらいの幅で、順番に調整していきます。すると、エンジンの回転数が少し上がる山の部分が出てくると思います。そのポイントを探しながら順番に合わせていきますが、これが微妙にしか変化しない場合もあり、馴れないうちは分かりにくいかもしれません。
気温やエンジンの暖まり具合でも若干の差が出てきますので、あまり深追いはせずに、とりあえず基準値のままで置いて、しばらく走って様子を見るのも手です。
このミニドライバーさえあれば、どこでも調整出来ますから、何回か走り込んで少しずつベストな位置を探してみてもいいでしょう。
PSが入っている穴の内側には、当然PSと噛み合うように細かいネジ山が切ってあるわけですが、これをドライバーの先端でひっかけて傷つけないよう、十分注意しながら作業してください。ここのネジピッチは通常のネジよりも細かく、切り直しはほぼ不可能。キャブの本体もアルミの鋳物なので、鉄やステンレスより脆いです。
もしネジ山をつぶしてしまったら、最悪の場合キャブごと交換するハメになるかもしれません。
こういう部分を素人がむやみに触るのはよくない、と言う人もいますが、PSを少々いじった所でエンジンが再起不能のダメージをこうむる事(過熱して焼き付くなど)はまずないですし、最初の値を記録しておきさえすれば、おかしいなと思ったらいつでも元に戻せますから、どんどんいじって、マニュアル上の数字などでは表せない、エンジンの息吹きを肌で感じてみるのもいいよね・・と作者は考えます。
しかしこのPSに限らず、何かの調整をする時には、他の部分(エアクリーナーエレメントやプラグ等)がきちんと整備されている事、そしてキャブ自体にも汚れや詰まりがない事、同調がきちんととれている事などが大切。
エアクリが真っ黒だったりパイロットジェットが詰まっているような状態では、いくら時間をかけて調整してもあまり意味はないですからね。PSはキャブ汚れやその他の故障を修正するためのものではありません。まずは日頃の整備をきちんとしておきましょう!