HOME

KCBM in SPA直入 '05

※文中にあるツーリングマップルの記号数字は2003年版以降のページ/エリア番号。旧版はそれ以前の版です。

2005年4月10日

椎葉村

那須橋からの眺め

R327との分岐点には小さめのダム湖があり、淡いグリーンの水面にかかる那須橋で向こう岸に渡ると、椎葉村はもう目の前だ。

ツーリングマップル九州P.39椎葉4-E 旧版P.53椎葉4-E

このあたりも桜の名所になっていて、ピンク色が遠くに幾つも見えている。しかし同時にこの辺りはトンネルも多く、しかもやたらと工事ばっかりしているので、あまり周囲の景色に見とれている余裕はない。

それにしても毎回思う事だが、どうもこの手の工事はちゃんと後々の事まで考えて地面を掘りかえしているのかどうか怪しいところがある。たとえば水道工事と電気工事をまったく別の業者がやっていて、それ自体はまあ普通なのだけど、いったん掘った地面を埋め戻して、それから別の業者が日を置かずに同じ所を同じように掘りかえしていたりするのをよく見る。あんな事するくらいなら、なんで同時にやってしまわないんだろう?そりゃ工期の問題とか、もっと言えば公共工事としての予算の都合もあるだろうが、道路の利用者としてはなんとなく納得がいかないのである。特にバイクは掘りかえして埋めた後の路面に出来る段差にはかなり敏感にならざるをえないので、気になってしかたがないのだ。

暗く細いトンネル

この近くには発電所がいくつかあって、ダム湖の水力を利用して電気を起こしている。言ってみれば椎葉村のある山全体が発電所の一部のようなものだ。

発電所近くには通称真っ暗トンネルという、いっさい照明のない困ったトンネルがある。幅も狭く、バイクでならどうという事はないが、4輪でここに進入するのはちょっと度胸が要るだろう。もし中で対向車と鉢合わせしたら暗い中でバックもままならない。しかもよく見るとトンネルの内壁はきちんと成型されておらず、自然の岩肌のようにデコボコしているのだ。まるで掘った当時の岩をそのままコンクリで吹きつけて固めただけのようにも見える。ここを初めて通って以来、もう何年も照明設備がないままだが、地元の人からはクレームのひとつも付かないのだろうか。もっともここの隣では新たなトンネル掘削をさかんにやっているので、もしかしたらこれも路肩崩壊の片側通行と同じく一時的な仮設トンネルのつもりなのかもしれないが。


R265からR388へ

椎葉村のメインストリートはR265とは別の道で小高い山側の斜面に平行しており、そのまま何も考えずに国道をまっすぐ走っていると通り過ぎてしまう。ここに村役場や学校、スーパー、食堂などが集中していて、他には旅館や民俗資料館、一応ガソリンスタンドも2軒ある。こんな山間部ではあるけど、なかなかどうして賑わっているのだ。ただ唯一公衆温泉がないのが残念なところ。スーパーの店先でアイス「ブラックモンブラン」を1本買い、下のR265に出てから路肩に停めたBandit250に腰掛けてかじりつつ、流れの早くなっている川のせせらぎを聞いた。

ツーリングマップル九州P.39椎葉4-D 旧版P.53椎葉5-D

さて、ここからがR265の本領発揮となる山間コース。聞けば土砂崩れであちこち道が消えかかっており、2トン以上の車は通行禁止になっているそうだ。「でもバイクなら大丈夫だよ」と地元の人に言われ、安心してはいたのだが・・。

崩落しかかっている道

椎葉村に別れを告げ、巨大な上椎葉ダム(わが国最初のアーチ式ダム)を右手に見上げながら、いきなり細くなった道を駆け上がる。途中、右に深く切れ込んで登るヘアピンカーブがあり、その頂点から曲がらずにまっすぐ行くと大河内・桑木原林道となり、R388へのショートカットになる。あとでツーリング仲間に聞いたところ、こっちの道の方が通りやすかったらしいのだが、この時の私はとにかくR265しか見えていなかったので、そのままヘアピンを曲がり、坂道を登るコースに入っていった。

眼下に椎葉中学校を眺め(道のずっと下にあるので校舎の屋上に学校名が書いてある)、ダム湖の南岸に沿って細く険しいR265を登り進んでゆく。さっきから対向車の姿はまったく見えず、だんだん不安な気持ちが高まってくる。本当に峠部分は通れるのだろうか?いきなり道が落っこちてるなんて事も、このあたりじゃ十分あり得る。

やがで山肌に沿うようなつづら折れの道になり、山腹のアールと谷川筋のV字部分を繰り返し何度も縫いながら、頂上の飯干峠を目指す。谷川筋には明らかに鉄砲水のような痕跡があり、山が深く削られて木々の根があらわになり、ゴロゴロと何本も転がっているのが見える。一応路肩部分には土嚢が積まれ、黄色と黒のトラロープで危険個所が仕切ってあったりするのだが、どうにも進むごとにヤバさが増しているように思えて仕方がない。でも、とにかく行ける所までは行ってみよう。

全面通行止めの看板

そのうち、目の前に白い看板が現れた。いままでにない直接的なインフォメーションで、全面通行止め・迂回路なしと太いマジックで素っ気なく書かれているではないか。「ここまで上がって来て、それはないだろう!」と憤慨したが、よく見ると通行止めの期間は先週で終わっている。つまり今は通れるわけだが・・もし本当にそうなら、こんな看板はさっさとしまってあるはずだ。1週間も出しっぱなしにしてあるのは何か理由があるのだろうか?問題箇所が残っているとか、そもそも日付を間違えているとか・・

Bandit250を路肩に停めてそんな思案をしていたら、すぐ脇の側道から夫婦連れの乗った軽4駆が現れた。彼らも峠の向こう側にある水上村に抜けたいらしいのだが、あちこち道が崩れているので、不安で通れないという。でもとにかく看板によれば通行止め期間は終わっている筈だし、結局はまた「行けるところまで行ってみましょうよ」という事で話はまとまり、身軽なバイクの私が先導する形で再びR265を登り始めた。

路肩の崩れかかった道を通るのはバイクではそう難儀な事でもないが、後ろに4輪を連れているとなると神経を使う。スピードを向こうに合わせて、ゆっくりゆっくりと坂道を登った。それにもし私がスリップなどを起こして転落する事があっても1人では助けも呼べないが、こうして一時的とは言え、連れがいる事で安心感も増す。これは軽4駆側とて同じ筈で、この峠越えの間、両者は一種の共生関係にあるわけだ。

しばらくすると、前方の峠側から普通車のミニバンがライトを照らしながら降りて来た。もしこのミニバンが峠を越えられず途中で折り返してきたのなら我々もUターンするしかないが、向こう側から越してきたのなら、我々も通れるという事だ! 私は反射的にクラッチを握りしめ、右手を振ってドライバーに停止してくれるよう促した。

結果そのミニバンは峠の向こう側からやってきており、車でもどうにか通れる事が確認出来た。後ろの軽4駆にグッと指で丸を作って見せると、すぐに納得してくれたようだ。そのまま再び発進し、2台連れで登坂を開始した。


水上村から人吉へ

市房ダムあたり

途中、車ではかなり危ない綱渡り的な部分もあったが、どうにか峠を越えて向こう側に出られる算段がついた。飯干峠の南側もかなり狭いクネクネ道だが、路肩崩壊も多少は控えめで、今までとすると格段に走りやすい。

ツーリングマップル九州P.39椎葉7-C 旧版P.60西米良1-D

ここでR388との分岐点を迎えるのだが、後ろの軽4駆はR265とは逆方向のR388で水上村へ行こうとしている。しかしこの先もまだ道は細く、路肩も危うい。私は最初の予定ではR265を末端の小林市まで走りきるつもりだったのだが、こっち側もこの先まともに通れるとは限らない。もう時刻は夕方の5時を回っており、あと1時間もすれば暗くなってしまう。というわけで、ここは無理せずにR388水上村方向に進路を向け、軽4駆を先導しながら早めに山を降りる事にした。出だしの思い切りもいいが、途中状況を見ての宗旨変えも早いのが私の性格なのだ。

R388を西に向かうと、だんだん周囲に白いガスが出始めた。道もかなり狭く、対向してきたワゴン車と危うくぶつかりそうになる場面もあったが、どうにか山道を抜けきり、明るいうちに水上村の平地まで降りる事が出来た。

ツーリングマップル九州P.43人吉2-L 旧版P.60西米良3-B

ここで軽4駆と手を振って別れ、Bandit250を路肩に停めて、乾いたタオルでメットのシールドをぬぐって一息。ここから西にある人吉市街地までは数十km、ガソリン残量にも十分余裕がある。あとは馴染みのR267を一気に南下する最短コースを取れば、薩摩川内市の自宅まではトータル2時間半と言う所だろう。

もう雨具の中は汗と湿気でグチャグチャ状態、出来れば熱い湯でひとっ風呂浴びたいところ。ここ水上村には元湯というお気に入りの温泉があるのだが、時間も時間だし、湯上がりにまたこの雨具を全身に着込まねばならないのかと思うと、ちょっと入る気が失せた。また天気のいい日にゆっくり入りに来る事にしよう。

路面に散った桜の花びら

近くの市房ダム周辺の桜並木は、一万本桜とも呼ばれる花見の名所。ちょうど満開の時期を迎えていたが、今日の雨で花びらは散りはじめ、濡れたアスファルトの路面にピンク色のじゅうたんがどこまでも広がっていた。見るとBandit250の泥よけやマフラーにもお化粧のように桜模様が少しへばり付いていて、ちょっとうれしい。そう言えば南阿蘇の一心行の大桜、結局今年は見に行けなかったなぁ・・。

来年のKCBMでは桜の名所をハシゴするコースもいいかもしれないな、などと考えつつ、Bandit250のエンジンを再びスタートさせた。さて、わが家までもうひとっ走り。


おしまい

本日の走行
599km
ガソリン
1,771円(13.63L・薩摩川内市)
959円(8.54L・熊本空港バイパスSS) 21.7km/L
1,232円(10.02L・工藤石油/馬見原SS) 20.6km/L
温泉
100円
食費など
1,155円
合計
5,217円