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佐多岬・最南端へ続く道

2002年11月18日

南下開始

大迫酒店

さたでい号発着所からは平坦な砂浜を行けるが、ちょっと先でテトラや入り江に行く手を塞がれるので、階段で上の道路に出て歩く。
トレイル側へ向かう道の角には、田尻地区唯一の食料品店である大迫酒店があり、食料品の他にお酒とたばこも入手出来る。ここでおにぎりやカップ麺などを買った。水はさっきの発着所でポリ水筒にたっぷり汲ん出来たし、ザックの中には小型のガスストーブ、インスタントコーヒーとカップまで入れてあるので用意は万端。到着予定時刻にはちょうどお昼頃になっているはずだから、最南端ランチとしゃれ込むのも面白い。

店の前の小道をずっと奥に向かって、行き止まり近くのコンクリ製の護岸に作ってある階段で浜に降り、いよいよ海岸線を最南端に向かって歩き出す。

海岸線を歩く作者の後ろ姿

足下は小石や珊瑚のかけら、貝殻でぎっしりと敷き詰められ、歩くたびに少し足を取られるが、さっきまでの砂地よりは歩きやすい。流木や浮遊ゴミも数多く散らばっているので、これを眺めているだけでも飽きない。海側には一面に細かく波状に穿たれたような岩が顔を出しており、足場の確かなこちらの方が歩きやすい場所もある。

目線を山の上の方に移してみると、ロードパークが通っているあたりには一定間隔でヤシの木やフェニックスが植えられているのがはっきり見える。いかにも人工物といった感じだ。こちらの海岸にもソテツが多く生えているが、どれもがまったくの自然のまま、岩に荒々しく張りついて自生しており、とても逞しい印象を受ける。


石ころ地獄

足下には小石や貝殻がいっぱい

さて、地図ではこの小石の浜が1キロは続くとなっているが、途中ちょっと大きめの石が転がっているところもあり、最初はよかったけどだんだん距離を重ねるにしたがい、疲労が増してくるのを感じる。

途中やや海側にせり出した部分で小休止。吹き出した汗をぬぐう。今日は朝6時頃に家を出てきたのだけど、かなり寒かった事もあり、今まで防寒肌着を着たままだった。しかしもう汗でびっしょりになっている・・。

ザックを降ろしてジャケットを脱ぎ、とりあえず下に着込んでいたウェアを脱いで身軽になった。本当はTシャツいっちょうになりたいところだけど、風はちょっと冷たいので、汗をかいた体では急激に冷え込んでしまうだろうから、少しずつ軽装にしていくように努めた。オートバイで走るときも、暑いからといってヘタに薄着で走ると体温が下がりすぎ、かえって疲れが増す事がある。

後ろを振り返ると港が遠くに見える

スタート時にスイッチを入れておいたハンディGPSを確認すると、移動した軌跡が地図と重なって、だいたいの現在位置がつかめる。あと少しで最初の山越え箇所になるようだ。しかし比較的歩きやすいと書いてあるこのあたりでこんなにバテていたのでは、ちょっと先が思いやられる。

それに今日履いてきたシューズも決定的に野歩きに向いていない事がだんだん判ってきた。一応持っているクツの中でいちばん歩きやすく履きやすいものを持ってきたつもりなのだけど、こういう不整地を歩くにはソールが軟らかすぎて、安定を保つのにかなり神経を使わなければならない。経験不足と言ってしまえばそれまでだけど、次回来るときはもっとしっかりしたトレッキングシューズで来ようと思う。


山越え地獄

最初の山越えのある入り江

田尻の港を出発するときに向こう側に見えていた批榔(びろう)島がすぐ左手に来たあたり。もう1キロ程度は歩いたはずだ。ここらあたりで山越え箇所があるらしいのだが・・

岩場を越えると、小石を敷き詰めた入り江のようなところに出た。向こう側の岩壁の横は海になっており、海岸沿いには進めない。山側を見ると、木の枝に何やら黄色いものが巻き付けてある。

(あれが目印だな・・。)

地図の作成者である斉藤氏が、こういったポイントごとに黄色と黒のトラロープで目印を付けてくれているのだ。ここは第1の山越えルートで高低差も少なく、簡単に越えられるとある。トラロープを確認するようにぎゅっと握りしめ、やや薄暗い林の中に入っていくと、傾斜はちょっときついが、普通に立って歩けるくらいの岩場だ。枯れた倒木が横になっていたが、邪魔にはならない。

頂上部分の岩を越えると、向こう側にも同じような坂。そして出口に目印の黄色と黒のトラロープが見えた。

高さ数メートルの岩壁

(なんだ、こんな程度か!)

降りた先は同じような小石の入り江。その先からは浜と浜の間に岩越えのような部分が多くなってきたが、この調子なら楽に着けそうだ。そう思った矢先・・

目の前にそびえる第2の山越えを前にして、しばらく立ち止まって考えてしまった。上の方の木に結ばれた長いトラロープが下がっており、ここが斉藤氏の付けた道すじに違いない。しかしこの傾斜と高さは、さっきとは比較にならない険しさだ。

木や草を掴みながら慎重に行けば、なんとか登れるとは思うけど、ロープ無しじゃちょっと怖いくらい。さたでい号発着所の職員さんは、険しくはないから気楽に歩いて・・などと言っていたが、地元の方にとってはこれも気楽な道の部類に入るのだろうか。それともあの人、まさかここまで歩いて来た経験がないのでは・・?

と、ここで文句を言っても始まらない。こいつを越えなければ、最南端どころではないのだから。

(行くしかない!)

意を決して、壁の下に取り付いた。