Bandit250のキャブは、アクセルの開閉に応じてピストンバルブが上下し、それにくっついて上下するジェットニードルによってガソリンの量が調整されます。このジェットニードルが出入りするパイプ状のパーツをニードルジェットと言い、長年走っているうちにお互いが擦れあって摩耗してしまいます。そうなると設計値を越える余計なガソリンが流入する事になり、エンジン的にもうまくありません。
じゃあサッサと新品に換えてしまおうぜ、と言いたいところですが、実はちょっとした問題があるのです。ニードルジェットはキャブ内部にある白っぽい樹脂ブロックにはまっているのですが、これはパーツリスト上に個別パーツとして載っていません。さらに樹脂ブロックとキャブボディの間にあるOリングも載っていません。つまりメーカー側としては、ここはバラしちゃダメだよ、というわけで、もし壊したらキャブボディ丸ごと買う羽目になります。
まあ作業者がよほどヘタクソでない限りブロックを壊すような事はないでしょうけど、最低でもキャブとの間にはさまっているOリングは新品に交換しておきたいところ。たいていの場合は経年劣化で固くつぶれていますから、一度引きはがすとOリングの役目を果たしてくれない可能性が高いからです。
純正パーツがないなら、流用しかありません。というわけで、なるべく手に入りやすいもので代用してみました。
潤滑に使われるCRC556スプレーはゴムや樹脂を痛めますので、このようなキャブ内部には絶対使わないでください。
まずキャブをおろし、トップキャップ側のピストンや下部のチャンバー、そしてジェットホルダを外します。
ジェットホルダを抜くと現れる金色の丸棒がニードルジェットです。これといっしょに上部にある樹脂ブロックを抜きます。固定はされていませんので、指で上に押すだけでポコッと出てくるはずです。ただし古い車体ではパーツどうしがベッタリと固着している場合がありますので、傷つけないよう慎重に、少しずつ抜き取ります。
問題のOリングはニードルジェットの根本部分にあります。案の定カチカチで、形が固まってしまっており、Oリングの役目はあまり果たしてくれそうにありません。キャブボディ側に貼り付いてしまっている場合もあります。
ニードルジェットは樹脂ブロックにはまっているだけですので、押すだけで抜けます。と言っても結構きつく入っていますので、角材などの上でゆっくり押し込んで抜きます。斜めになると樹脂が割れるかもしれません。慎重に・・。
無事抜けたら、新しいニードルジェットを差し込みます。穴が開いている方がエンジン側になりますので間違えないように!
交換用のOリングですが、キャブ内に使うわけですからガソリンの攻撃性に耐えうる2種や4種Dと呼ばれる規格が望ましいですが、いざ買うとなるとあまり置いてない事が多く、値段も高くてサイズも自由に選べなかったりします。
そこで同じ耐油性Oリングの中でも入手の容易なニトリルゴムの1種Aという規格を入れてみました。ここはキャブの中心部分ではありますが、ガソリンの流れに絶えず晒されたりはしないでしょうし、ものすごい高熱になる事もないでしょうから、このグレードでもなんとかイケるのでは?と考えた上での選択です。
形状とサイズはいくつかの種類を試してみたうえで、呼び番号がS-10というタイプにしました。Sが円筒面および平面固定用を意味し、10は線径1.5ミリ、内径9.5ミリを示します。通販サイトでひと袋20個入りが300円ほどで買えました。
後は元通り組み立てて、しばらく実地テストを行いたいと思います。もし劣化が激しかったり機能しなかった場合は、定期的にメンテするか材質を見直す必要があるでしょう。
ニードルジェット交換をする時は、同時に相方のジェットニードルも交換した方がいいでしょう。こちらは比較的簡単でキャブをおろす必要もありません。
2008年11月から2011年8月まで約2年9ヶ月、走行距離にして1万5千キロほど走りました。この間の燃費は22〜25キロ/リッターとなかなかの好成績。街中ばかりを走る状況でも20を切る事はなかったと記憶しています。やはりニードル周りのリフレッシュは効果がありますね。
キャブを開けて見たら、問題のOリングも劣化はほとんど見られず、十分実用レベルに達しているようです。これで純正パーツがなくても自由に分解出来ますね。
ヨコワケさんから投稿された情報により、このOリングの純正部品番号が13278-47090-000と判明しました。これを元に純正のOリングを取り寄せて上記のS-10と比較してみました。価格は1個136円(税込)でした。
線径はわずかにS-10の方が太く、直径は逆に純正の方が若干大きいですね。実際にジェットブロックにはめてみるとS-10の方が少しきつく、そのぶん細くなってくれるので、セットしてもうまくフィットしてくれているようです。ゴムの材質は純正の方がやや硬めに感じました。