※文中の()内の数字は、昭文社刊ツーリングマップル(2000-2001年度版)のページ/エリア番号です。
お昼を終えて、さらに南を目指して走り出す。
(九州:P81/E-1)
道はあいかわらず狭くてクネクネしているが、笠沙の上の方に較べるとずいぶん走りやすい印象だ。以前は分岐路の看板の地名が解りにくかったり、矢印がてんでの方向を指していたりで迷ってしまった事もあるが、もう今はそんな事はなさそうだ。それに最近は携帯用GPSやナビがあるので、よほど山深い変な林道に迷い込まないかぎり、安心して走れる道となっている。
ここでも道路脇の植物たちの勢いは大したもので、うっかりすると標識や電線までもがツタにからまれ、覆いつくされようとしている。ちょうど今くらいの繁茂期には各地でさかんに草払いが行われるが、1ヶ月もすると元の木阿弥といった状況。南国の生命力はやっぱり侮れないのである。
走っている途中、民家の軒下であざやかに咲いている花を見つけ、写真におさめた。ハイビスカスのようでもあるが、ちょっと色が薄い。鹿児島の観光地にはバンバン植えられている赤い花も、こういう何気ないところにあってこそ、より南国のイメージを高められるのだと思う。
坊津町の標識を過ぎてから、ちょっとした山越えが2箇所ある。といってもそれほど険しいものではない。あっというまに久志湾に下り、県道とのT字分岐を右「枕崎方向」に進む。
(九州:P81/F-3)
この先には「風車村」という観光施設があり、屋外プールやスライダーなどがある。遊戯施設はともかく、そこからの海の眺めが素晴らしいので、いつも立ち寄ってしまうところだ。
ところでツーリングマップルではこの付近の注意書きに「時間の余裕をみておく なかなか先へ進まない」とある。確かに通常の国道からすれば時間がかかるのも事実だが、昔と較べるとずいぶん走りやすくなっているなと感じた。
マップルのデータは7、8年以上も前に発行されたエアリアマップ時代のテキストをそのまま引き継いでいる部分もまだ多いので、必ずしも現在の状況と一致しない事がある。そのような新しく見つけた道や情報を愛用のマップルに書き込むのも、また楽しみのひとつだろう。
ちなみに加世田市からここ久志湾まで来るのに2時間半。寄り道やお弁当、それに葉書スケッチなどしながらのタイムだから、あとは推して知るべしである。
案内看板に従って右に折れると、海岸まで痛快なワインディングが続く。高低差があるので250だときつい面もあるが、400以上のツアラーならもっと楽しいだろう。左カーブの向こうに青い海が見えたら、風車村はすぐそこ。このあたりではもっともメジャーな観光施設だった。
(九州:P81/E-4)
「だった」というのは、今はもうプールや滑り台の営業はやっていないから。夏休みだというのに無人の駐車場が閑散としている。詳しい理由は忘れてしまったが、施設はそのまま残っており、放棄されているといった方がいいかもしれない。このあたりには他にもいろんな施設が出来ては放棄されているようで、景色はいいのだけど、経営的にはなかなか上手くいかないようだ。
ここまで来るには、さっきまで走っていたようなクネクネ道を走破する必要があるというのも要因のひとつのような気がするが、ここの裏手にある海水浴場は今でもそこそこ賑わっているから、やはり何か施設のあり方に問題があったのだろう。
まぁ・・こんなに奇麗な海を眺めながら人工のプールにつかりに来る事自体、なんだかアホらしい気がしないでもない。
ここの高台には周囲をぐるりと見渡す展望台があって、東シナ海の雄大な景色を一望出来る。九州の人なら知っているだろうが、このあたりは某焼酎のテレビCMによく使われていた事でも有名だ。
風車村をあとにして、坊の港を過ぎると大きなトンネルが現れる。ここを抜けた先が耳取峠、そして枕崎の市街地まではわずかに10分ほどだ。
(九州:P81/F-4)
耳取峠は頂上部分に小さめのベンチがある程度で、注意してないと通り過ぎてしまうくらいのところ。でもここを境に自然豊かなリアス式海岸の景観は終わりを告げ、枕崎から指宿の開聞岳まで続く、ゆったりとした南国風の景色となる。空気が澄んでいると、ここからはるか向こうに開聞岳が見えるらしいが、私はまだその機会に恵まれた事がない。
この峠から下はもう住宅地であり、車通りも一気に増える。ついさっきまで狭い道をグリグリ走っていたのとはまるで違う景色と街の喧噪に、もう一度さっきの道に戻りたいなぁ・・なんて気持ちになってしまう。
枕崎から川内まではR270を北上して、わずか1時間半の行程。海沿いの寄り道旅よりも時間を優先させたいハイスピードツアラーは、こちらのコースでどうぞ。
(九州:P81/G-4)
結局、今回描いた葉書は全部で18枚。自慢出来るような絵柄ではもちろんないが、南国鹿児島の夏の雰囲気が少しでも伝わってくれればと思う。デジカメ・データを印刷して、宛名ソフトで毛筆調に・・なんていうのは確かに楽だし、目新しいレイアウトが自在に作れて面白いけど、手紙にとって大事な部分をどこかに置き忘れてしまっているような気がする。ケータイのEメールで用件が瞬時に伝わってしまう現代だからこそ、これからも手書きの味わいを残しつつ旅していきたいなぁ・・と思った、暑い夏の一日であった。
おしまい