※文中の()内の数字は、昭文社刊ツーリングマップル(2000-2001年度版)のページ/エリア番号です。
野間半島を海岸づたいにぐるりと回って走るR226は、昔よりマシになったとはいえ、まだ狭いところが多い。最近になって広々とした舗装道路や立派な橋が出来ているが、それも全体のせいぜい1、2割くらいだろうか。バイクならともかく、車でここを通るのはちょっと躊躇してしまう。そのかわり海の眺めは最高にいい。周辺の深い緑とあいまって、まだ人の手がさほどついていない自然を感じさせてくれる。
途中、工事による片側通行があって、見ると信号待ちの時間が2分以上。こういうところでは残り10秒くらいになると、待ちきれずに見切り発車をしていく車が多いが、ここではみんな大人しく青になるまで待っている。くねくね曲がる狭い道、無為に急いでも大して違わない事を知っているのか、単にのんびりとした気風の人が多いだけなのか・・。
こんなに狭い道だけど路線バスもちゃんと通っていて、前方から道一杯に現れた巨大バスを前に、バイクでも離合に四苦八苦する事がある。
道ばたのバス停にはだいたい何人かのおばさん達が陣取って、日傘を片手にバスを待っている。走行中のバイクの上からぺこりと会釈すると、みなさんにっこり笑っておじぎを返してくれる。鹿児島の田舎の方ではごく自然な事だけど、都市部ではまず出会えない光景だろう。
ときおりすれ違う車と距離をはかりつつ、アップダウンのある狭い道をくぐりぬけると、すっと広い道に出た。もうすぐ野間の漁港にさしかかるはず。
立派な歩道まで整備された広い道の向こうに、野間池の漁港が見えてくる。
(九州:P77/D-6)
港の背景にある山には、白い風車が何本も建っているのがこの距離からでも見てとれる。海風が恒常的に吹いている地の利を活かして、風力発電の施設が作られているのだ。同様のものは大隅半島の先端部にもあり、山々の緑と人工物の白い風車がなんとも不思議なコントラストを見せている。
風車のある山上へは、港の先から続く急坂を登っていく。低速トルクに乏しいBandit250にこの急坂はちと辛いが、どうにかこらえて登り切り、やがて山上の公園のようなところに出た。
バイクを停めて腰を伸ばしつつ周りを見わたすと、あちこちに三本羽根の風車が建っている。遠くから想像していたよりずっと支柱も太く、巨大な風羽根だ。それぞれに「第○号発電所」と表札が付いており、ぜんぶで10数本はあったろうか。
なるほど、ここは吹く風がとても気持ちいい。あまり人通りのない場所だろうが、道や駐車場は掃き清めたように落ち葉のひとつも落ちていない。きっとこの風が全部さらって行ってしまうからだろう。岬の先端はまだずっと向こう側にあり、道路も途中までしかなく、どうやったらたどり着けるのか見当もつかない。ヤブ漕ぎしたり、佐多岬のように海岸沿いに歩けば行けるかもしれないが、上から見てもかなり険しそうだ。
ちなみにここは「鹿児島県本土最西端」の地でもある(※注2-1)。眺めもいいし、先端物件好きのツーリングライダー諸氏にはぜひ訪れて貰いたい。夕陽の時刻にはきっと素晴らしい景観だろう。売店や自販機はないが、なぜかすごく立派なトイレがある。これもたぶん県本土でいちばん西にある水洗トイレだと思う・・。
さて、ここで最初の絵はがきを描いてみた。夏の空をバックに、風車をいくつか入れてみる。こむつかしい技法や画材に凝る必要などない。道すがらのスケッチなんて、こんな程度で良いのだ。
そろそろお腹も空いてきた。今日はにぎりめしと熱いお茶を自宅から持参しているので、どこか日陰のある場所でお昼にしよう。