初心者が自転車用のウエアを選ぶ際、おそらく最も抵抗が強いのがサイクルパンツの類ではないでしょうか。下半身にぴったりフィットしたテカテカのパンツを履いて街中を走るなんて、これじゃ裸で出歩くのと同じじゃないか!・・なんて、作者も初心者の頃(昭和50年代)はかなり勇気が要ったものです。
しかしながら近年は自転車ブームの後押しもあり、カッコよくておしゃれなデザインの製品も増えたおかげで、昔ほどには抵抗はなくなっているようです。少なくともこの格好で走っても競輪選手に間違えられる事はほぼなくなりました。
見た目はさて置き、実際に使ってみてこれほど効果を実感できるウエアは他にないでしょう。自転車ビギナーにとって最初の関門は昔も今もお尻の痛みですが、それが緩衝パッドで軽減されるだけでも、まるで翼が生えたような気持ちになり、どこまでも走っていけそうに思えるものです。股間のパッド以外でも伸縮性にすぐれ発汗を促す素材は自転車運動にぴったり。
サイクルパンツ未体験の方はぜひトライしていただきたいものです。これまでとは違う世界が見えてくる事でしょう。
自転車用ウエアの老舗、PEARL IZUMI製の夏用ハーフパンツ。全体は黒いナイロンの伸縮素材で、股間やお尻の部分にSMTと呼ばれるポリウレタン製の緩衝パッドをつけたもので、サイクリング向けのごくスタンダードな製品です。県庁所在地の専門ショップで6千円ほどでした。
最近のパッドは立体的な構造になっていて、いかにもショック吸収性が高そうなものばかりですが、これは最廉価な品だったせいかほぼ均一な厚み。それでもさすがは一流メーカー製、必要最小限なレベルでサドルからのショックを逃してくれます。
パッドは見た目は革っぽいですが、高密度スポンジのような素材で通気性がよく、これで口を塞いでも呼吸が出来るほど。吸汗性と速乾性にも優れています。
購入後6〜7年使ってもまだ現役ですが、さすがに最近はサドルと擦れる内股部分がささくれて薄くなってきたので、そろそろ寿命でしょうか。
8年間履き倒したお古をようやく新品に買い替えました。同じくPEARL IZUMI製の夏用ハーフ、コンフォートパンツです。
ガチの競技向けウエアならもっといい素材やハイテクパッドが付いて1万数千円もしますが、これはコンフォート、つまり趣味のサイクリング向けに設定されたもので、初めての人でも手を出しやすいでしょう。
サイズは先代と同じくLを選択。同じメーカーならサイズ感もほぼ同じなので、試着など現品を確認出来ない通販でも安心です。
パッドは先代よりも前後に長く、左右も幅広。起毛されているせいか股の直下の感触がよく、乗り心地はかなり改善されています。もっとも8年使ってペッタンコになったド中古パンツから新品に替えたのですから、良いと感じるのは当然とも言えますが、その分を差し引いても、やはり新しいサイクルパンツはよく出来ているなと思いました。
同じくパッド入りパンツですがこちらはインナー用、つまり普段着の中に付けるタイプです。表面素材はアウター用よりもやや薄く、丈も短めでボクサーパンツに近い感じ。
たまたま通販サイトで見かけたもので、細かい部分を見れば縫製が雑だったり、パッドが見た目の厚さほどにはクッション効果がなかったりしましたが、何も付けないよりは数段快適になります。
この手のサイクルパンツは直履き、つまり下着をつけずに装着するのが普通。下着の布地や縫い目がパッドとの間に挟まると、せっかくの快適性が得られず、悪くすると皮膚がこすれて腫れあがる事もあるからです。しかし直接履くとなると汚れの付着がどうしても気になるもの。具体的に言えば、サイクリング中にトイレの大がしたくなった場合、ウォシュレット付きのトイレじゃないと絶対したくない!と思っているサイクリストはきっと多いでしょう。その点、これくらいの価格なら複数枚買いやすいし、数千〜1万円越えの製品と比べても気楽に日常使い出来ると思います。
買った時はとりあえずひと夏持てばいいや、くらいに思っていましたが、意外に使い心地もよく、秋冬シーズンにもまだ使えそうです。
2017年10月11日追記 使い始めて2年少々、腰のゴムの張力がやや落ちてきました。まだずり落ちて来たりはしませんが、初期のフィット感はもうないです。パッドはまだちゃんとしています。
ちなみに洗濯はいつも手洗いで、洗濯機を使うのは脱水の時だけにしています。
ペダルとシューズをスキーの板のように機械的に結合させると、効率のいいペダリングが可能となり、少ない労力でより速く、より遠くまで走れるようになります。ひと昔前はクリップと革ストラップでプレート付きシューズを締め上げたものですが、今は足首の操作だけで簡単に脱着可能なビンディング式が主流です。
この分野でもメインストリームはやはり日本のシマノ。クリート(靴底にある留め具)がソールに隠れるほど小さく歩行が比較的容易な、オフロードレースやトレッキングライド向けのSPDと、三角形の大きなクリートで歩行向きではないものの、パワー伝達効率のいいオンロードレース向けのSPD-SLがあります。
参考リンク:cyclist・はじめてのビンディングペダル シマノ「SPD」と「SPD-SL」の違いとは?
ESCAPE R3に付けたSPDペダルと同じシマノ製のSH-MT31。県庁所在地にあるプロショップ坂之上サイクルにて約8千円で購入しました。
外見は普通のスニーカーかトレッキングシューズのようで、普段の街乗りでも抵抗なく使えます。作者の足のサイズは24.5〜25センチですが、自転車用シューズのサイズ表記はヨーロッパ式のフレンチサイズで表されるのが慣例。お店で実際に履いてみて一番フィットした40を選択しました。
シマノのSPD対応シューズはクリート(ペダルと結合するための部品)がソールの中に隠れて出っ張らないため、歩行がしやすいというのが売りですが、実際に買って履いてみるとソールがほとんど曲がらないため、かなりの違和感がありました。まるで学校のトイレにあった便所ゲタを履いてるようで、長時間歩くとかなり疲れます。
足の力をペダルに無駄なく伝えるため、ちょっとやそっとでは変形しないよう作られているので仕方がありません。まあ出先でのちょっとした散策や階段の上り下り、お店に出入りする程度なら、さほど不便はありません。
ビンディングペダルは慣れるととても快適なものですが、脱着に不慣れなうちは足が出せずに転倒しかかって恐い思いをする事もあります。そこで標準のクリートよりも脱着が容易になるマルチモードクリート・SM-SH56というオプション品を入れてみました。地元ショップで千円ほど。
写真の左側の黒い方が標準品で、右側の金色のがマルチモード。ペダルにはまる部分の角が斜めに削ってあり、ロックが外れやすくなっています。標準仕様の水平回転だけでなく、斜めにねじる動作でも簡単に外れてくれるので、信号待ちの多い街中でも安心感がグッと増しました。
クリートのネジを受ける金属板はナットと呼ばれ、前後2つの位置が選べるようになっていますが、使っていない方は素通しの穴のまま。実はここから水が入り放題なのです。もっともシューズの真下にはペダル本体がありますから走行中にドバドバ浸水する事はないですし、一応防水目的のシールを靴底の内側に貼るようになってはいますが、どう見てもただの紙シールなので耐久性はあまり期待出来ないですし、使っているうちに粘着がだんだんズレてくるのです。
まずは開いた穴をコーキング剤でふさぎます。力のかかる部位ではないのでこれでも十分でしょうし、いざという時の除去も簡単です。石けん水で指を濡らしながら軽く押さえるようにすれば、指先がコーキング材でベタつくことなくうまくいきます。
靴底のシールは、ビニールハウスやカーポートの屋根などの補修用として売られている防水補修テープを貼ってみました。ナット部分に合わせてテープ幅は5センチくらい。ホムセンに行けば500円ほどで手に入ります。防水だけ考えるなら単純にナットの周囲をコーキング剤で固めてしまえばいいんでしょうが、あとで微妙な調整がしにくくなります。
長く使っているうち、シューズの底がだんだん磨耗し、クリートがアスファルトなどの固い路面にガリガリと当たるようになってしまいました。もっとも最初から多少は当たっていたのですが、この1年ほどで顕著になってきたのです。
SPDクリートを削るわけにはいきませんので、市販の補修材をシューズの底に塗ってかさ上げをしてみます。補修材は有名なシューズドクターを使ってみました。近所のホムセンで450円。
まずは説明書に従って下地処理を念入りにします。この手の接着系の作業は準備段階で手間を惜しむと、たいていロクな結果になりませんからね。底部の掃除をきっちり行ったら、付属の紙やすりでゴム面をザラザラに荒らします。
はみ出し防止のため、付属の樹脂板をテープでへりに固定したら、いよいよ補修材を盛ってゆきます。
あまり高くするとかえって歩きにくくなると思うので、かさ上げは2〜3ミリ程度にとどめてみました。その後24時間以上放置し、完全に硬化させます。
樹脂板および余分なはみ出しを慎重に除去したのち、はいて歩いてみました。結果はバッチリ!クリートが当たる音もせず、じつに快適です。
ただし少々厚く盛りすぎたせいで肝心のSPDペダルにうまく入らなくなってしまいましたので、干渉する部分をモーターツールやデザインナイフで削り、どうにかペダルにピタリと合うよう仕上げることができました。
2017年3月29日追記 補修加工後1年半が経過。盛り材の剥がれや欠けもなく、ほぼ変わりなく快適に使えています。シューズドクター、なかなかに優秀ですね。この間の歩行距離は不明ですが、ESCAPE R3での走行距離は4千キロほどになりました。
作者のSPDシューズには脱着を容易にするためのマルチモードクリートが装着してありますが、最近あまりにも抵抗なくスパスパ脱着してくれるので、不安になって靴底のクリートをよく観察してみたら、ペダルに当たる部分の角がすっかり磨耗しており、先端部は歩行時に路面と当たって斜めに削れ、薄くとがっていました。
そこで同じ型の新品(シマノ SM-SH56)と入れ替えてみました。以前は金色でしたが今のはなぜか銀色です。交換後はペダルに収める時の「パチン」という音がはっきり聞こえるようになり、脱着時の節度もかなりよくなりました。そのかわり、これまでのように安易に脱着できなくなったので、そこはまた慣れるしかないでしょう。
9年半使い続けたSPDシューズを新しくしました。前のと同じシマノ製のSH-CT41です。
近年、SPD系システムの一部を初心者や街乗り向けとして改良したCLICK'R(クリッカー)というグループが誕生。このCT41もその流れのひとつです。
と言ってもこれまでのSPD規格とは互換性があり、クリートも同じSPDのマルチモードが使われています。クリッカー仕様のペダルはキャッチ金具が改良されており、従来品よりも脱着がうんと容易になっているそうです。
サイズは前のMT31と同じ40にしました。実はこれまでのは少々きつく、シューレースをかなり緩めて履いていたのですが、今回のCT41は同じサイズにもかかわらず、かなり余裕が感じられます。いちいちシューレースを解かなくとも簡単に履いたり脱いだり出来るので楽チン。
中敷きを実測してみたところ5ミリも長くなっていました。これで同じサイズ記号と言うのもどうかと思いますが、むしろ新しい方が普通の靴の40サイズに装着感が近く、逆にこれまでのMT31の方が小さすぎたのでは?という気がしています。
クリッカー系はソール全体が比較的曲がりやすいのが特徴で(と言っても普通のスニーカーよりは硬いですが)、旧型と比べて歩行がとても楽になりました。前のMT31はまるで便所ゲタでも履いているかのようで、長い階段や斜面を下りる時などは結構神経を使いましたが、こいつなら楽に行けそうです。
ソールの変形はペダリングのパワー効率低下にも繋がりますが、そこまでスピードを追求したいのならレーシング用のSPD-SLを使ってくださいね、という事でしょう。あくまで街乗りや軽いサイクリング向けのシューズだ、という設計者の意志がひしひしと伝わってきます。
重量は片側で315グラム(クリートなし)と、MT31より85グラム軽くなったのも嬉しいポイントです。側面や上面が通気性に優れたメッシュ素材というのも、軽量化に大きく寄与していそうです。
購入したセットにはクリートは付属していませんでしたので、これまで使っていたものを移植しました。ネジ穴サイズや間隔も全く同じで、そのまま移せます。
今度のは位置調整用の目盛りがあるので、効率的に合わせられそうです。
慣らし及びクリートの位置合わせ調整を兼ねて近場を30キロほど走ってみました。ペダルは先代シューズといっしょに9年以上前から使っているシマノ製SPDペダル、PD-A530ですが、全く問題なくカチッと入り、踏み込みも問題なし。
余裕があって履きやすいのはいいけど、中で足がスコスコ動いて不快なのでは・・なんて想像もちょっとしていましたが、適度なルーズさがかえっていい感じに作用しているようで、快適です。パワーの源泉たる自転車シューズはズレなくぴったりフィットすべきだ、というこれまでの考えを少し改める必要があるようです。
通気性のいいメッシュ素材は寒い時にはちょっと困るでしょうが、今の9月末くらいの気温なら、夕方から夜にかけても全く気になりませんでした。厳寒期には厚手のソックスとかシューズカバーなど、何らかの対策を考えましょう。サイズに余裕があるので、ソックスもいろいろ選べそうです。
新しいクリッカーペダルに交換したのを機に、同梱されていた新品クリートに交換しました。もちろんMの刻印のあるマルチモードクリートです。
これまで2年間、約5,000キロほど使ったクリートにも目立った磨耗や不具合は出ていませんでしたが、やはり新品には新品を合わせた方が後々いいでしょう。