薩摩半島では唯一の大規模自転車道である、吹上浜砂丘自転車道をご紹介します。薩摩半島の西岸、日置市の日吉から南さつま市の加世田までを海岸沿いに南北に走る、約23キロの行程。正式名称は一般県道加世田日吉自転車道線といいます。
吹上浜砂丘自転車道の北側の起点は日置市日吉町。
国道270号と県道37号が交わる日置帆の港(ひおき・ほのみなと)交差点から入ります。
県道37号とは逆方向(海側)へと分岐する細い筋が、自転車道への入り口です。
細い路地を一番奥まで入ると、上り坂が急激に立ち上がっていますので、車で来られる人は鼻先をぶつけないようスピードをうんと落としてください。路面には痛々しい傷跡がいっぱいついています・・。
坂の上は舗装された広場になっていて、車を停めておくのにちょうどいいです。人があまり来ない場所なので、施錠はしっかりと。
サイクリングロード・スタートと大きく書かれたゲート。ここが吹上浜砂丘自転車道の北側の起点です。
左奥の細い筋を入ると砂地の空き地と船着き場があり、車はそちらの方にも停めておけます。
自転車道への入り口はここの他にもいくつかあり、国道沿いに案内看板が設置されていますので、それに従って入ればOKです。
ちなみに、国道270号の交差点を、自転車道とは反対側の県道37号に入ってしばらく走ると、NHK大河ドラマ「篤姫」で一躍有名になった小松帯刀一族の墓所があります。
それでは約23キロ彼方のゴール地点目指して、走り出してみましょう。
青い海に向かってゆるやかに下れば、目の前には白い砂浜。
お天気がよければ最高のロケーションです。アイドルの写真集撮影に使われた事もあるほど。
しかし、すぐに海とはお別れ。道は山林と田園風景の中に入ってゆきます。
実はここからゴール地点までの間、ルート上から海が見える場所はほとんどありません。防砂林が広大で、自転車道と海岸線の高低差もあまりないためです。海沿いの自転車道という事で、青い海を眺めつつ走るサイクリングを期待していた人にはちょっと申し訳ないです。
しばらく行くと国道270号に合流し、歩道上を進む事になります。
吉利(よしとし)交差点の押しボタン信号で向こう側に渡ったら、自転車道は国道と別れて単独の一本道となります。
他の多くのサイクリングロードと同様、ここも自転車専用ではなく、あくまで歩行者との兼用道。地元の人の生活道路でもありますから、スピードはむやみに出さず、交差点では一旦停止や左右確認をし、よく注意したうえで進みます。
この道にはかつて南薩線という鉄道が走っていました。吹上浜砂丘自転車道の北側の一部は、その線路跡を利用して造られています。
吉利には国道270号の跨線橋があったので、自転車道も鉄道線路と同じように国道の下をくぐって伸びていました。
しかし途中で信号機も横断帯もない国道を渡らせるなど、少々危険な部分も残されていたのです。
2006年末頃から国道を直線化する工事が本格化。それに伴い跨線橋も撤去されました。
ついでに自転車道もこれまでとは反対の海側へ移設され、危険だった横断部分も解消されました。
スタートして約2キロ、吉利駅跡に到着。昔の石積みのプラットホームが当時のまま保存されています。
すぐ近くには古風な売店があり、ジュースやパンが買えます。
吉利駅跡の近く、道の横の笹ヤブに隠れるように高さ1.5メートルほどのコンクリ製の柱のようなものがあります。かつて列車の運行に使われていた信号機の土台なんだそうです。
鉄道ファンならずとも、こういうものが道端にあると、ちょっとワクワクしませんか?
木立を抜けると、周囲に広がるのは一面の畑。牧歌的な風景を眺めつつ、往時の鉄道旅に思いを馳せます・・。
スタートして約4キロ、ちょっと長めの下り坂を降りきると、日置市の物産館、かめまる館に到着。行動食の補給や食事、男女別の水洗トイレが利用出来ます。
近年レンタサイクルのステーションも整備されました。
すぐそばの永吉川にかかる浜田橋は、鹿児島県内に数多く残る古い石橋の中でも珍しい三連アーチ構造。
この古い石橋の上を、自転車道が通っています。
石橋の横には、南薩線の鉄橋の橋脚が今も点々と残されています。
ちなみに、ここから河口の向こう側に海がちょっとだけ見えます。
石橋を渡りきったら、自転車道を示す看板に従って右折。
赤い車止めのある道がそうです。手前にある道と間違えないように。
右に入ってしばらく行くと、再び昔の駅の石積みプラットホームが現れます。
かつて永吉駅があった場所で、ここも休憩所として近年きれいに整備されました。
ゆるやかなアップダウンを越えながら、田畑や川沿いを縫うように、どんどん南下して行きます。
途中、両側が剥き出しの岩と土になっている、鬱蒼とした木立の中を通る坂がありますが、下にはいつも落ち葉や枯れ枝が厚く重なっていてスリップしやすい路面です。南下方向だと下り坂なのでスピードも出やすいですから、スピードを落としつつ気をつけて通りましょう。