初期型Bandit250の本格的メンテナンスは、まずタンク降ろし作業から始まります。プラグやエアクリーナー、冷却水の注入口など重要な部分はすべてタンクの下ですから、ぜひマスターしておきましょう。手間はともかく、決してむつかしい作業ではありません。
満タン時の燃料タンクの重さは10数キロにもなりますから、なるべくガソリンが減った頃合いを見計らってやった方が楽です。
まず前シートを取り外します。
前シートのロック解除はヘルメットホルダーの回転キーと共用になっていて、ヘルメットホルダーの爪を閉じてさらに時計方向に少し回すと、シートの前部にある固定ロックがパチンと外れます。
シートの裏には4ミリの六角レンチがセットしてあるはずです(中古車では紛失している場合もあります)。次のサイドカバーはこれを使って外します。
続いてサイドカバーを外します。
最初に下端にある固定ボルト1個を、4ミリの六角レンチで外します。これ以外にはネジは使われていません。
ボルトを外したら、カバーの左右の端をしっかり持ち、ゆっくり水平に引っぱります。左右2ヶ所にある樹脂製の突起が、タンク側についているゴムのブッシュ(リング)にはめ込んであるだけですので、引っぱるだけで抜けます。
固定ボルトを外さないままうっかり引っぱってしまうと、ステーとサイドカバーとの接合部分がすぐ折れます。特に低年式のものは樹脂が弱くなっていますので、あまり力をかけないようにしてください。
燃料コックに入っているホースを2本とも抜きます。太くてスプリングが巻き付いているのがガソリン用ホースで、真下から入っている細いのは燃料コック内部の開閉弁を動かすための負圧用空気ホースです。
それともう1本、タンクの裏側から給油口の水抜き用ホースが降りていますが、これも途中の三つ又ジョイントあたりで、同じ要領で引き抜きます。
燃料ホースを抜く時の燃料コックの位置はONまたはRESでなければなりません。下向きのPRIだと、ホースを抜いた途端にガソリンがどんどん流れ出てきます。
ONまたはRESでもガソリンが流れ出て来る場合は、コックの不良(内部にある負圧弁のゴミ詰まりや張りつきなど)が考えられます。放置歴の長い車体にはよくある症状のようです。コックを分解して掃除する手もありますが、内部構造はデリケートなので注意が必要。もし修理中に部品を壊しても、コックの内部パーツはメーカが販売していないので、コック丸ごと買わなければなりません。
フューエルコックASSY 部品No.44300-11D00(98年3月時点で5,000円)
時として、ホースが固く張り付いていて抜けない事もあります。しかし力まかせに引っぱっても逆にホースの内径がすぼまって抜きにくくなるだけ。そこでいったん反対方向に押し込み、ホースを膨らますようにして、それから少し前後にねじるように回せば、微妙にすき間が出来て張り付きもはがれ、多少抜きやすくなります。
それでもまだ無理そうならドライバーの先端ですき間を少しずつ広げたり、ペンチでそっとつかんで回転させるようにしてみます。くれぐれもホースを傷つけないように慎重に。もしホースがひどく傷ついたり、先の方が割れてしまったら、その部分だけカットして捨ててしまえばいいです。純正でも長さに若干の余裕はありますから、2〜3回くらいは失敗しても大丈夫でしょう。
タンクの後ろは2本のボルトで止めてあります。10ミリのボックスレンチまたはスパナで外します。上下にゴムのブッシュがはさんでありますので、落としてなくさないようにしましょう
このゴムブッシュ、毎度注意してはいるんですが、何かのはずみにポロッと落としてしまいます。色が黒いので夜だと見つけにくいんですよね。
地面や床に落ちてくれれば転がる音でなんとなく行き先がわかりますが、ふと気付くといつのまにか消えている場合もあって焦ります。経験からすると、地面以外ではスイングアームの付け根の平らな部分に落ちてる事が多いですね。あとバッテリーの後ろのゴムフラップとの間とか。いちど車体左側にあるレギュレータの放熱板あたりに引っかかって、色も周囲に同化しており、翌朝まで気付けなかった事があります。
今はボルトを外したらすぐタンクを浮かし、ブッシュだけ先に抜いて確保するようにしています。
外したタンクはコックやホースに重量がかからないよう、しっかりした箱の上などにまっすぐ乗せておきましょう。
裏返したり横倒しにするとキャップ部分からガソリンが漏れてきて危険です。もちろん置き場所の周囲は火気厳禁!
タンクの前側は上の写真のようになっていて、フレームとタンクのベロがかみ合っているだけです。組み立てるときは、タンクのベロが緩衝ゴムを噛み込まないようにまっすぐ入れないと、正しい位置まで押し込めません。左右から両手でタンクとフレームをあわせ持つように添えて、車体の中心に合わせるようにして前方にゆっくり押し込めば、上手くいきます。
手前にある水温スイッチなどの配線をひっかけないように注意してください。
燃料コックからの配管は2本。太い方がガソリンで、細い方が負圧用。負圧のホースはキャブの2番(進行方向に向かって左側から2番目)とエンジンとを繋ぐパイプの下部にある専用の取り出し口から引きます。これが2番の位置にない場合、過去マニュアルを持たない誰かに分解された経歴があると見てもいいでしょう。ちなみに1995年以降の後期型Bandit250/250Vでは1番からになっています。
負圧用ホースが途中で極端に曲がったり、傷ついていて空気漏れがあったりすると、燃料コック内部の負圧弁がちゃんと動かずにキャブへのガソリン供給が間に合わなくなって、結果的に走行中のエンストやパワー低下などの症状が出る事があります。ホースの接続を忘れてしまっている場合も同様。
リザーバータンクの白いフタには小さな三角マークがあって、これを後ろに向けるのが標準。この向きで車体右側へは三つ又ジョイントを経由した水抜きホースが入り、左側からは冷却水の圧力キャップ直下への長いホースが伸びます。この左側はタンク内部にも20cmほどのホースが降りていますが、右側は単なる穴だけ。それぞれ役目が違うので、逆につないではいけません。
三つ又ジョイントのまん中から出た排水ホースは車体の下側に落とし、エンジンとフレームの間から車体右側に出して、バンドなどで留めておきます。ちょうどエアクリーナーボックス下部からの油分排出用ホースも同じ場所に出ているはずです。でも要はあふれた水がスムーズに出て行ってくれればいいわけですから、走行中のスイングアームやサスペンションの動きに支障の出ない場所であれば、適当なすき間にぶら下げておいてもかまいません。
マニュアルを見ると、リザーバータンクから圧力キャップへのホースはキャブとエアクリーナーボックスの間(3番と4番のインレットパイプの間)を通すよう指示されています。しかし作者は最初の頃右側のフレームぞいをまっすぐ通していました。当時まだマニュアルを持っていなかったというのもありますが、その方がずっと自然なように思えたからです。ですから逆に言えばこのホースがキャブ間を通っていなかった場合、上記の燃料コック負圧ホースと同じく誰かに分解されていた可能性がありますね。
しかしホースの折り曲げや圧迫、エンジンからの熱などに配慮しておけば、どこを通しても問題はないです。マニュアルにある「フタの三角マークを後ろに向ける」という指示も、ホースを差し込む場所を正確に記述するのが目的のようで、それさえ間違わなければフタはどっち向きでも動作に支障はありません。