初期型BanditやGooseの顔でもあるホワイトメーターと赤い指針。しかし寄る年波で針の色はすっかり抜け落ち、白っぽいオレンジ色になってしまっている人は多いと思います。しかもスピードとタコの双方が必ずしも同じ割合で退色しないから左右で全然違う色になってたりして。
とりあえず走行には影響しない部分とはいえ、運転中つねに目につく場所なので、どうも気になってしまいます。これ、なんとか塗り直せないものでしょうか?
メーターの照明球交換は以前やったので、このあたりの構造はだいたい心得ていますが、計器面までバラすとなると少々面倒な手続きが待っているはず。時間のとれる休日に、ゆっくり構えてやってみましょう。
参考にしたサイト→起きろ!バンディット/メーター分解
メーターを分解すれば簡単に走行距離を誤魔化す事が出来るかもしれませんが、これで不正に利益を得る事は法的にも詐欺行為にあたります。そのへんはご自分の中の良識とよく相談してみてください。それに走行距離を多少減らしたところで10年オチ初期型Bandit250の下取り相場など知れたものですし、不自然に少なければ怪しまれるだけ。このメーターは開けたら必ず痕跡が残ります。
まずBanditからメーターを取り外します。
ガラスの下の計器面まで到達するには、金属製リングのカシメをこじって抜き取る必要があります。マイナスドライバーで端から少しずつ、慎重にエッジを起こしていきます。均一にやらないと、あとで閉めるときに面倒になります。ボディに傷が入るのがイヤな人は、円周上にビニールテープを2,3回巻いておくといいでしょう。
この作業は全周くまなくやらないと、きれいに外れません。
ケースの底とメーター面外周に各2本ずつあるビスを抜けば、メーターユニットが取り出せます。イグナイターからの点火パルスを元にメーターを動かす電気回路の基板と、金属板の上を動くコイルに直結した指針が確認出来ます。裏面にあるネジロックで固められたマイナスネジは校正用のスクリューでしょうか。触れないように注意。
文字盤は透明な樹脂製ですが、全面に黒の下地塗装が施されていて光は透けません。唯一レッドゾーン部分のみ透過させるため塗装が抜いてあります。表面の文字盤にはクモの巣が張っている事が多いですからきちんと掃除しましょう。でもあまり擦りすぎたりケミカル剤を使うと文字が薄くなってしまう事がありますので要注意。
同様に白いプラケースの方も掃除しておきます。ここも意外とキタナイです。2つの電球の光はこの白い内壁に反射して全体に広がるようになっているので、念入りにやっておきましょう。
少々面倒なスピードメーター。これは側面から出ているトリップリセットの回転ノブが邪魔をして、ビスを外しただけではバラせないからです。ちょっと工夫すればいいのですが、ここでは書かない事にします。針を塗るだけなら、このままでも十分ですしね。
前輪からワイヤーで伝えられた回転が内部にある磁石を回し、メーター裏側に直結された金属のカップを過電流の作用で動かします。芯棒には細く繊細なつるまき式のリターンスプリングがあり、まるで時計の内部を思わせます。
回転はさらに樹脂製のウォームギアでオドメーターとトリップメーターにも伝えられ、走行距離を刻みます。ギア部分にはグリスの類は一切塗布されていません。たぶんホコリを吸い寄せるのを嫌っての事でしょう、ここは触らず、そのままにしておきます。
Banditのメーターの針は夜間ボウッと浮き上がるように見える事から、きっと半透明の樹脂か何かを使っているのだろうと想像していました。しかし今回バラしてみて、薄い金属板をプレスしただけのものである事がわかりました。磁石にはつかなかったので真鍮でしょうか?まぁ安手の目覚まし時計と同じようなものです。ご覧のようにテスターで導通をあたってみても一目瞭然・・ちょっとガッカリ。
それでは塗装に入ります。
経験上、こういう細かなパーツはヘタにスプレーなんかするよりも、ちょっとたっぷりめに素早くハケ塗りしてやった方がきれいに仕上がります。文字盤に塗料が垂れないよう、切れ込みを入れた紙で覆ってから、毛抜けのない筆でサッと塗ってしまいます。湿度が高いと色がカブってきれいにならないので、なるべく乾燥した晴れの日にやりましょう。
今回はラジコンカーのポリカーボネイト製透明ボディ塗装に使う専用スプレーを、ペットボトルの底を切って作った皿にたっぷりスプレーし、それをハケにとって塗りました。この塗料はラジコンのグロー燃料やベタベタの排気オイルにさらされても落ちにくい耐油性があります。もっとも各種塗料を試した上での選択ではなく、たまたま手元にあっただけです。
塗るときはハケを動かす向きを出来るだけ一方向のみにするのがコツです。交互に向きを変えるような返し筆は塗膜が荒れやすいので禁物。ちょっと下に垂れてもいいくらいの気持ちで、ササッと手早く塗ってしまいます。本当ならハケ塗り用のビン塗料の方がいいんでしょうが、手持ちのビン塗料はフタを開けると年数がたってドロドロになっていたので、使わずに捨ててしまいました。この手の塗料はあまり古いものは使わない方がいいです。固くなったのを無理に溶剤で溶いてもいい結果は得られません。
乾くのを待つ間、ガラスをきれいに洗って掃除。ゴムの枠を手で広げればガラスと金属のリングが取り出せます。
ガラスのフチは素の切り口ですから、手を切らないように注意。いつも雨や風にさらされている外側はともかく、内側は水垢っぽい汚れが一面ベッタリでなかなか落ちません。お風呂の浴槽用洗剤バスマジックリンの原液に30分ほどひたし、やっときれいになりました。
もうひとつの金属リングですが、これはどうやら照明光を外に漏らさず反射する目的があるようです。といっても塗色は真っ黒。これ実は後期ロットになると反射率を良くするためか色の白いものに替えられているようなのです。夜間の見づらさを改善するためにも、ここはちょっと色を変えてみたいところ。しかし黒いものを白く塗るのは下地が透けるなどしてけっこう大変だし、それ以前に白い塗料はあいにく手持ちがありません。いっそビデオテープの白地のラベルステッカーでも貼ってみようかなとも思いましたが、その時ちょっとドライバーでリング表面を擦ってみたら、案の定下地はアルミか何かの銀色です。「じゃあ剥がせばいいじゃん!」とリューターとヤスリで塗装面を削って地肌を出してみました。これでかなり反射率は上がったハズ、夜間の視認性にどう影響するか楽しみです。
もしダメだったらマジックで黒く塗っちまえばいいだけです。
実際に点灯して比較してみました。左が無加工で、右が反射板を削って下地を出したもの。この時はまだ昼間だったので布団をかぶせて撮影しました。ちょっとわかりにくいですが、右側の方の光がやや広く出ています。
塗装が乾いたら、組み立てです。内側の微少なホコリをエアーダスター等で十分に吹き飛ばしてから装着します。また開けるのは難儀しますから。
リングの向きを確認しながら、上から押し込みます。メーターリングとゴムパーツがきっちり合っていないと、ちゃんと定位置まで入りません。このやや押し込んだ状態のままで、カシメ作業をやります。
下に雑誌を敷き、ウォーターポンプ・プライヤーで雑誌ごと挟み込んで、順番に曲げていきます。円周上を順繰りにゆっくり、確実に仕上げていきます。途中で間があくと、金属の曲げが一様にならず、モッコリと出っ張ったりしますので、必ず順番にやっていきます。
しかしながら、たぶん1回目はかなりガタガタにならざるを得ないでしょう。あまりひどいとメーターのカバーをかぶせたときに当たって入りにくくなったり、ギザギザがすき間から飛び出して見苦しくなったりします。とにかくあせらず、じっくり構えてやるのがコツのようです。
左が作業前、右が作業後です。
赤い針が目にも鮮やかなコントラストで、カッコよくなりました。新車同様とまではいきませんが、なかなかいい感じです。しかし鮮やかすぎて最初はちょっと違和感もありますね。馴染みの彼女がある日突然真っ赤なルージュを引いてきたような気分。
夜間走行もゴキゲン。針の見え方は以前とあまり変わりませんが、文字盤がずいぶん明るくなりました。
せっかくここまで開けたんですから、何か面白い事をしてみましょう。自分のサインやカッコいいステッカーを貼るのも面白そうです。もっともそのせいで下取り額がガタ落ちになっても知りませんが・・まあ初期型Banditはそういう事を気にするような時期はとっくに過ぎてますけどね。