セカンド・エアクリーナーとは、キャブ内部のピストンがエンジン負圧で上下する際に容積が変化するダイヤフラム下部気室と外部の大気をつなぐ部分につけられている防塵フィルターの事。
といってもピンとこない方もおられるでしょうが、要するにキャブ内部への空気の出入り口。余計なゴミなどが入らないよう、スポンジ製のフィルターが設けられています。
しかしこのスポンジ、すぐそばにあるエンジンの熱のせいか、どうも3〜4年くらいしか寿命がもたないようで、劣化してくるとボロボロに崩れはじめ、フィルターの役目どころかこいつ自身がゴミになりかねないのです。そうなる前に純正の新品に替えてしまえば問題ないわけですが、この程度のスポンジ、わざわざバイク屋に行って注文しなくたって、そこいらにある材料で自作出来そうです。
Bandit250が採用しているのはCVキャブ。これはエンジンの負圧(空気を吸い込む力)を利用して動くものです。
この図のようにピストンバルブ(1)の上部には密閉された空気室(2)があり、ダイヤフラム(4)と呼ばれる薄いゴムの膜によって、下側の空気室(3)と完全に仕切られています。
エンジンが回り負圧が発生すると、空気室(2)の中にあった空気が、ピストンバルブを貫通している穴を通ってエンジン側に吸い出されます。その力でピストンバルブ自身が引っ張り上げられ、先端に仕込まれたジェットニードル(とがった針)のすき間からガソリンがエンジン内部に向かって噴き出します。
この負圧(空気を吸い込む力)は、通路の途中に設けられた円形のバタフライバルブ(5)、つまりアクセルで加減されるので、運転者のアクセルの回し方に従ってピストンバルブが上下し、空気とガソリンが適度にエンジンに供給されます。これによってエンジンの回転数をうまくコントロールしているわけです。
この負圧のかかり具合が4気筒とも均一になるように、それぞれのバタフライバルブの回転軸を微調整して合わせる作業の事をキャブの同調といいます。
このCVキャブの仕掛けをきちんと動かすには、ピストンバルブの下の空気室(3)の空気圧を常に一定に保っておく必要があり、そこにつながる空気の出入り口がセカンド・エアクリーナー(A)というわけです。もしここがゴミ詰まりなどで空気の通りが悪くなると、ピストンバルブの上下運動の抵抗になり、アクセルを開け閉めしたときのレスポンスが鈍くなる事もあります。
セカンド・エアクリーナーはエンジンのヘッド部の上側、プラグキャップの真上にある、黒いプラスチック製の四角い箱です。プラスドライバーでビスを1本抜き、クリップをずらしてパイプを引き抜けば簡単に外れます。
エアクリの箱はツメ2ヶ所でとまっています。ちょっと固いのでマイナスドライバー等でこじって外しますが、プラ製なので無理して折らないように注意。外すと中にある薄いスポンジが出てきます。
このスポンジがまだしっかりしていれば、汚れをエアブロー等で掃除し、元に戻すだけでOK。しかし普通のユーザーでこの部分を気にする人はほとんどいないでしょうから、新車当時から一度も開けられてないBanditも多いと思います。古くなったスポンジはちょっとつまんだだけでベタッと潰れて復元せず、たちまちボロボロに崩れてしまうはずです。これでは再利用は不可能。
ピストンバルブ室にある四角いへこみの奥に、セカンド・エアクリーナーへ繋がる丸い穴があります。もしスポンジがボロボロに傷んでいたら、このあたりやパイプの中にゴミがたまっていないかもチェックしてみてください。
Bandit250:キャブ/ピストンバルブ・ニードルの分解掃除
代用品として考えられるモノはいろいろありますが、口にあてて息をしてみたときに抵抗なく空気を通す材質で、フタをしめたときにズレない程度の厚みが稼げれば何でもいいでしょう。
今回は掃除機用の紙パックを適当な大きさにカットして使いました。以前はキッチンタオルを2重に折って入れていた事もありますが、特におかしな動きはありませんでした。ただ梅雨時などで水気を含むと空気抵抗が増し、乾きも遅いような気がしますので、やっぱりスポンジ材を買ってきて、大きさを合わせて切って入れるのが無難かもしれません。
パイプ径が合えば、ラジコンエンジン用のエアフィルターなんかも面白そうですね、耐油性もありますし。その他パイプの取り回しを工夫して、毎回プラグ交換時に邪魔だったボックスを他の場所に移すなんて手もアリかな?
自由な発想で、いろいろ工夫してみてください。でも何かトラブルがあった場合いつでもノーマルに戻せるよう純正パーツは捨てないでおきましょう。
このセカンド・エアクリーナーのボックス部分、実際に外してみるとわかると思いますが、微細なゴミの侵入を防ごうという割にはちょっとすき間が多いというか、作りがチャチな感じがしますよね。口で息を吹き込んでみても、正規の出入り口の他に合わせ目のすき間やツメの部分からかなりの空気が漏れるのが解ります。中を開けてみると箱の中に微妙にホコリがたまっていたりしますから、フィルター以外のところから少なからず空気を吸っているようです。
そこでビニールテープで周囲のすき間をべったり塞いでみたところ、確かに空気の漏れは少なくなりましたが、空気抵抗が増えたせいかエンジンの吹け上がり方、つまりピストンの動きが少しダルな感じで、軽快感がなくなってしまいました。
対策として、テープの代わりに障子戸のすき間をふさぐスポンジテープを切って周囲に詰めてみました。これで多少はマシになった感じです。
100円ショップをうろうろしてたら、ふと目についた台所用の皿洗いスポンジ。これがエアクリ代わりに使えないかな〜?と思い、1パック買って帰り、ちょいと切ってみました。しかし軟らかいスポンジ部分は保水性をよくするためか、意外と密度が高くて通気性も悪く、よっぽど薄くスライスしないと空気抵抗が大きいです。むしろ固い面(スコッチブライト。鍋のコゲをこする所)が空気もよく通って使えそうでした。というわけで現在作者のBandit250にはこれを入れています。厚みも稼げるので、上記にあったスポンジテープの詰め物は除去しました。
台所用スポンジを入れて5年経過しましたが、純正フィルターのようにボロボロになる事もなく、しっかりと形状を保ってくれています。実に優秀です!