DAHON特許の折りたたみ機構は、これまでホムセンレベルのフォールディングバイクしか知らなかった作者の目からすればなかなかの優れものですが、ちょっとした問題点もあります。ラッチ(開閉レバー)の調整が不十分なまま乗り続けるとテンション調整ボルトが折れるという事例を時折見かける事と、そうなった場合の細かな部品交換が困難な点です。
よく乗る人は、折りたたみ部分のラッチを定期的にチェックしておくべきでしょう。
調整方法に関する資料として、以前はDAHONのアメリカ本国サイトからPDFマニュアルをダウンロードする事が出来ましたが、2017年4月現在は旧型の掲載がありません。DAHON 2004 compactmanual.pdf というキーワードで検索をかければ、どこかで見る事が出来るかもしれません。これの51〜57ページにスチール製ハンドルポスト(ステム)ラッチの調整方法が、45〜50ページにフレームラッチの調整方法が書いてあります。
上記のマニュアルによれば、スチール製ハンドルポストの場合、折りたたみラッチを開閉する時に10キログラムの力が必要となるよう調整をしなさい、とあります。
Adjust until the handle post latch opens and closes with 10 kg. (22 lbs.) of force.
と言っても正確に測るのは難しいので、とりあえず家庭用の体重計を使って、針が10キログラムになるまで上から手で押してみると、必要な力加減が把握しやすくなります。
調整はラッチ部分にある調整ボルトを回して行います。ボルトを伸ばす(抜ける)方向に回すと閉じるのがきつくなり、縮む(締まる)方向に回すとゆるくなります。
フレームの折りたたみラッチにも力加減の指定があります。こちらはハンドルポストよりも数値が小さめで、FDB206のスチール製フレームでは3キログラムという指定です。
ちなみにアルミフレームの場合は5〜6キログラムとなっています。
Adjust the latch bolt so that the latch opens and closes with the correct amount of force ( 5-6 kg. (11-13.2 lbs.) for aluminium models and 3 kg. (6.6 lbs.) for steel models ).
フレームのラッチ調整もハンドルポスト側と同じしくみで、ボルトを伸ばす(抜ける)方向に回すと閉じるのがきつくなり、縮む(締まる)方向に回すとゆるくなります。
ラッチをパチンと閉じた後は、それぞれのラッチストッパー(カギ状の引っかけの付いた樹脂パーツ)を回してラッチの上からかぶせるようにします。
これは万一のラッチ起きあがり事故を防ぐ安全装置であり、ラッチ自体を固定保持する目的のものではありません。ラッチはあくまで閉じた時のボルトテンションのみでガッチリゆるみなく固定されているのが正常な状態です。
参考までに、DAHONライセンス車のハンドルポスト(ステム)が破損した例を写真入りで掲示しているサイトを下記に挙げておきます。
DAHON正規取扱店によれば、もしここのボルト類が折れてしまってもパーツ単体としての取り寄せは出来ず(調整ボルトの端がカシメてあるので分解不可能)、ハンドルポストを丸ごと交換する事になるようです。
FDB206に乗り始めて一番最初に気になったのが、ハンドルに力をかけるたび鳴る、キチッ、キチッ、という金属音。たいていはハンドルステム根本にあるラッチのテンションを張り直す事で消えてくれますが、なかなか収まらない時には、ステムの合わせ面にグリスを少量給脂するのが効果的でした。
ホームセンター等で入手しやすい安価なリチウムグリスでもいいですが、強い圧力が集中してかかるためか、あまり効果が長持ちしてくれない印象があります。そこで作者はオートバイの整備でも使っているPermatex社のANTI-SEIZE(アンチ・シーズ)という耐熱グリスを塗っています。金属粉が練り込まれているので圧力に強く、効果も持続してくれますが、このためだけに買うのはちょっとムダかもしれません。
生活自転車においてはほとんどメンテされないであろうヘッド部分ですが、FDB206のような小径車は27インチ車と比べてホイール回転の生み出す安定力・復元力が格段に小さいためか、ステアリング回転軸のスムーズさが操縦性に大きく影響する印象があります。
さらにスポークの短い小径ホイールでは路面からのショックが緩和されにくく、ヘッドパーツに大きな負担がかかりがち。ちょっと面倒ではありますが、定期的にメンテナンスしておきたい部分です。
FDB206のステムは形状こそ特殊ですが、固定方法はごくオーソドックスな斜臼引き上げ式のスレッドステム。ハンドルを倒し、中央にある引き上げボルトを回してゆるめます。
六角の二面幅は13ミリ。一般的なスパナセットには入ってないかもしれません。
引き抜くと斜臼が出てきます。構造は一般的なものですが、差し込み部分はほぼ必要最小限の長さしかありません。
サビや汚れを落とし、差し込む前にはグリスを薄く塗っておきます。
ヘッドのパーツを分解し、パーツクリーナーや灯油できれいに掃除します。
ベアリングリテーナーは上下共通で鋼球の数は22個ずつ、鋼球サイズは5/32インチでした。
グリスアップして元どおりにセット。ついでにヘッドパイプの内側もきれいに掃除し、サビ止めに薄くグリスを塗っておきます。
この時代のDAHONフレームはオーバーサイズヘッドを採用しているので、ナットの調整と締め付けには36ミリという大きなサイズのスパナが必要です(一般車は32ミリが多い)。
上側のナットは厚みのあるモンキーレンチでもいけますが、下側のナット(玉押し)をきちんと位置決めするには薄手のヘッド専用スパナが欠かせません。アヘッドステムが普及する前のMTBによく使われていましたが、最近はお店でもあまり見かけません。
純正では2つのナットの間に共回りを防ぐ目的の回り止めワッシャーが挟まっているので、一応スパナ1本でも調整可能ですが、このFDB206に限らず、回り止めワッシャーに頼ってヘッドの締め付けを何度もやっていると、直径の大きなヘッドナットの回転圧に負けて爪がつぶれてしまったり、フォークコラムのネジ山にひっかかって座面の平行にズレが生じたり、最悪コラムのネジ山を傷つけてしまうケースもあって、作者はあまり信用していません。可能な限り2本のスパナで調整し、中途半端にチビた爪は安全のためヤスリで削り取ってしまう事もあります。
ダブルナットの要領で、ヘッド部分にガタがない状態でもっともスムーズに回る位置でナットを固定します。上のナットを締め付けると下のナットもそれに押されて微妙に下がるので、ピタッと決まった状態で締め付けると大抵重くなってしまいます。よって、ややガタがある状態で締め付けるのがコツ。
ガタのチェックにはハンドルステムが必要なので、上のナットにスパナが差し込めるだけの隙間を空けて仮固定しておきます。
フロントブレーキをかけた状態で車体を前後に揺らし、ヘッド部分に指を当ててガタの有無をチェックしながら調整します。
うまく決まったら、ハンドルステムを一杯まで下ろし、ホイールとハンドルバーが垂直になるよう合わせてから引き上げボルトを締め付け、本固定したら作業終了です。
念のため試走をしてみるのもお忘れなく。
FDB206のリアスプロケットは昔ながらのボスフリー式。これを外すにはシマノ製のTL-FW30という専用工具が必要になります。
今でこそ普及クラスの安物にしか使われなくなったボスフリーですが、昭和の頃は高価なデュラエースやカンパニョーロ・レコードもみんなこの方式で、専用工具もメーカーやタイプによって2本爪や4本爪など様々な種類がありました。
現在入手可能な6〜7速ボスフリーはほとんどがシマノ製かその互換品なので、TL-FW30があれば大抵カバー出来るでしょう。
専用工具をフリーの中心部分に奥まで差し込んで、スパナでもって反時計方向に回して抜きます。場合によってはなかり固い事もあるので、なるべく長めのスパナやレンチを使い、グッ、グッと体重を小刻みにかけてショックを与えるようにすれば回しやすくなります。
締め付ける時は、軍手をはめた手でフリー本体をつかんで、時計回しにグイッと力を込める程度でOKです。これは経験上、締め付け時に専用工具を使ってしまうと固く締まり過ぎ、次回のメンテの時に外しにくくなるからです。ボスフリーはペダルをこぐたび常に締め付け方向に回転するので、走行中にゆるむ心配はまずありません。
取り付ける前にネジ山部分にグリスを薄く塗っておくのも忘れずに。
ホイールの回転軸にあたるハブのベアリングは年一回くらいを目安に分解して汚れを洗い流し、新しいグリスをつめて再調整をします。FDB206のように安い自転車でもちゃんと手入れしてあげれば、快適に動いて長持ちしてくれるものです。
ハブ分解の基本はダブルナットなので、左右どちらかのナットを二本のスパナを同時に使って分解します。まず内側にある玉押しを固定しておき、それを足がかりに外側のロックナットをゆるめます。ペダルと違い、ハブのシャフトに切ってあるネジは左右とも普通のネジなので、すべて反時計回りでゆるみます。
玉押しの固定には厚みの薄いハブスパナが必要になりますが、わざわざ自転車用の工具を用意しなくても大きめのホムセンに行けば売っています。フロント側で使うハブスパナは13ミリです。
普通サイズのスパナをグラインダーで薄く削って自作している人もいます。3ミリ少々の薄さであればOK。
分解出来たらシャフトを抜きます。もちろん反対側のナットは分解する必要はありません。
フロント側の鋼球は左右10個ずつです。
リア側も同様の手順で分解します。フロント側と違うのは、前もってフリーホイールを外す必要がある点。専用工具さえあれば、脱着の手順は簡単です。
フロントハブは左右対称なので、どっち側を分解しても構いませんでしたが、リアハブはなるべくボスフリーがついていた側を分解した方が、後々の調整時に楽です。それにボスフリー側は玉押しとロックナットの間に長めの円筒スペーサーが入っているので、薄いハブスパナじゃなくても普通のスパナやモンキーで代用可能です。
ちなみにリア側の玉押しの二面幅は15ミリです。
リア側の鋼球は左右9個ずつ。フロントよりも大きなサイズのが入っています。
分解した各パーツは汚れや古いグリスを念入りに洗浄し、新しいグリスを塗っておきます。高価な専用クリーナー剤など買わなくても、冬場に使ったストーブの灯油の余りで、お古の歯ブラシでもってゴシゴシしてあげれば十分。ただし灯油は意外と揮発しにくいので、洗った後はしっかりと拭き取るようにしましょう。
きれいになったらハブの玉受け(お皿)にグリスを塗り、鋼球を並べてゆきます。
グリスは鋼球どうしのすき間が埋まる程度で十分。あまりベッタリと盛りつけても走行中にすき間からはみ出してきて結局ムダになります。
作者は、その辺のホムセンで普通に売っているありふれたリチウムグリスを愛用しています。ロードレーサーに夢中だった頃は高価なナントカエースを使っていた事もありましたが、正直言ってそれほど差を感じた事はありません。色が違うだけで成分は同じなのでは?って気がしていたくらいです。
このクラスの安物ハブでは、どんなグリスを使ったとしても雨の中を一日走れば大半が流れて水やゴミが入ってしまいます。生活の足たる自転車には、惜しげなく使える汎用グリスが一番合っていると思います。
CRC556などのサラサラした潤滑スプレーをハブやフリーの回転部分にたっぷり吹きつけている人がたまにいますが、せっかくのグリスが浸透性の高い油で洗い流されてしまい、油切れを起こしてベアリングがダメになってしまいますので、絶対やらないようにしましょう。
初心者にとっては玉当たり調整が最大の難関。ハブを回転させた時にスムーズに回り、なおかつガタが出ないように調整するのが目的ですが、最初はなかなかうまく行かないでしょう。しかし手順そのものはさほど難しくないので、何度か繰り返しトライすれば自然とコツが身についてくると思います。
まず玉押しを軽く締めて調整し、回転具合やガタの有無がちょうどよくなったと思ったら、ハブスパナを使って玉押しが今の位置から動かないよう保持しつつ、外側のロックナットを締め込んで動かないよう固定する、というのが基本動作。
しかし最初の仮締めの段階でピタリと決まっていても、ロックナットをグイッと締め付けると玉押しが微妙に内側に追いやられるため、回転が若干きつくなります。その分を差し引くつもりで、ややガタの残った状態で締め付けるのがコツ。その後、ガタをチェックしつつ少しずつ追い込みながら仕上げてゆきます。
この作業の途中で一番イライラするのが、玉押しを微妙に調整しようとした時やロックナットを締め込む時にシャフトもいっしょにクルッと動いてしまい、どれくらい調整したかが不明確になる点です。これが把握しにくいままでは、いつまでたっても決まりません。
そこで作者はハブ調整の簡便化のため、モンキーレンチをもう一本と、厚さ3〜4センチ、長さ30センチ、幅15センチの木板に、ハブシャフトがちょうど入る穴を2つ(フロント用8ミリ、リア用10ミリ)、ドリルで開けた簡単な治具を使っています。
まず調整しているのと反対側のロックナットにもう一本のモンキーレンチをかませ、それを下にして木板の穴にシャフトを突っ込んで支えにします。
この状態で、下に入れたモンキーレンチの柄を両足で保持すれば、調整中にシャフトが余計な回転をせずに済むので、微妙な玉当たり調整が短時間で確実に出来る、というわけです。
プロの職人さんはアクスルバイスという特殊な工具を使ってシャフトを下から固定して作業しますが、これはその代わりです。
木板はなくても可能ですが、シャフトのネジの分だけ床面から浮くので、モンキーレンチを保持しにくくなります。
回転をあまり軽く調整するとガタが出やすくなる傾向がありますから、ちょっぴり抵抗があるくらいが適正だと思います。シャフトを指でグイグイ動かしてもガタがなく、ゆっくり回してゴロゴロ感が目立たない程度になれば、まあ合格でしょう。
作者の基準は、シャフトの両端を両手の指で持ち上げ、指で掴まずに乗せただけの状態で、スポークを親指でひっかけて回転させた時、シャフトが指の上で転がり出さない程度のスムーズさが得られればOKとみなしています。
FDB206のボトムブラケット(BB)はコンベンショナルなカップ&コーン式。ママチャリを始め、普及クラスの自転車に多く使われているタイプです。と言っても構造的に劣っている訳ではありません。昔はデュラエースやスーパーレコードもこの方式でした。
当節流行のカートリッジ式BBと違い、使っているうちグリスが流れ出てしまうので定期的なメンテナンスが必要ですが、逆に言えばアマチュアでも分解組み立てしやすいシンプルな構造を持っており、調整も容易。ちゃんと手入れをすれば長期間にわたって使えるのが大きなメリットです。作者も年に1回は分解し、きれいに掃除して新しいグリスを充填したのち組み付け、再調整しています。
まず、クランクの脱着作業にはコッタレスクランク抜き(リムーバー)と呼ばれる専用の工具が必須。これがなくては何も始まりません。
シマノ純正のTL-FC10という工具が最もポピュラーでしょう。
クランク軸部分にある保護キャップを外し、クランクアームを固定しているフィキシングボルトを回して抜きます。ボルトは穴の奥にあるので、14ミリサイズのボックスレンチが必要です。
ボックスレンチがない場合、コッタレスクランク抜き工具の一方の端にちょうど同じサイズの六角穴が設けてありますので、これを使って回す事も出来ます。
フィキシングボルトはペダルやBB本体と違って左右とも正ネジなので、普通に反時計回りで緩みます。
クランクが動いてしまってやりにくい場合、六角の位置をうまく合わせ、クランクとスパナを一緒に握るようにして力を込めれば緩めやすくなります。うっかり指を挟まないよう注意!
昔の自転車のクランクは上記のような固定方式ではなく、クランクの丸い穴に丸いシャフトが差し込んであるだけでした。丸いどうしでは空回りしてしまうので、シャフトのはめ合わせ部分に小さな切り欠きをもうけ、そこにクランクの横からコッターピンというクサビのようなパーツを差し込んで固定していたのです。この方式をコッタード・クランクといいます。
その後、四角や波型など、非円形の断面を使ってボルトやナットで固定する方式が登場。「コッターピンがない」という意味でコッターレス(コッタレス)クランクと呼ばれるようになりました。そしてコッタレス方式が主流となった現在でも、この呼び名が残っているというわけです。
旧式となったコッタード・クランクですが、今でも一部の業務用自転車やクラシックサイクルにおいて見る事が出来ます。オールドファンの中には、自転車漫画の草分け的存在「サイクル野郎」の冒頭で、主人公がコッターピンをなくして父親に怒られるシーンを思い出す人もいるのでは?
次にクランクアームとBBシャフトを分離させますが、お互いガッチリとかみ合っているので、手で引っぱった程度では抜けません。
そこで再びコッタレスクランク抜きの出番(と言うか、これが本職)です。
まずボルト部分を伸ばした状態にしておき、コッタレスクランク抜きの本体部分のネジをクランクアームの穴に時計回し方向でねじ込み、ネジ山がほぼ隠れるまでいっぱいに入れます。
素手で回せなくなったらそこでストップ。無理に締め込んではいけません。
次に、伸ばしておいたボルト部分を時計回しに締め込んでゆきます。するとボルトの先端が、奥にあるBBシャフトにコツンと当たります。
そこからさらにスパナで締め込んでゆけば、ボルトが突出する力によってクランクがBBシャフトから強制分離される、という訳です。
・・とまあ、文章で書くとちょっとややこしいですが、実際にやってみると割と簡単です。
チェーンはそのままにしておくと作業の邪魔ですし、地面に垂れて砂などがついてしまうと厄介ですので、この段階で針金やヒモなどを使い、サドルあたりから引っ張り上げて保持しておきます。
分解するのはチェーンのない左側です。左ワン(鋼球が収まっているカップパーツ)を固定している環状のロックリングを回して抜きます。ここも普通の正ネジなので反時計回りで緩みます。
ここはフックレンチと呼ばれるカギ爪状の専用工具をミゾに引っかけて回すのが正しい方法。この写真ではESCAPE R3のスプロケット脱着に使っているスプロケット戻し工具TL-SR23にあるフックレンチ状の切り欠きを使って回しています。これは本来ピスト車のシングルスプロケットに使われるロックリングを回すためのもので、サイズもBBとは微妙にフィットしませんが、なんとか使えます。
フックレンチがなくても、マイナスドライバー等をミゾにあてがい、ハンマーでコツコツと叩くだけでも何とかイケます。固い場合はCRC556などの潤滑浸透スプレーを吹き付けてからしばらく置き、焦らずコツコツと叩きます。力まかせにガンガン叩くとミゾがつぶれたり、最悪ロックリングが欠けてしまう事もありますので、慎重に。
リングが外れたら左ワン本体、BBシャフト、左右のベアリング・リテーナー(9個の鋼球がセットされている金属の丸枠)をすべて抜き出します。
チェーン側にはまっている右ワンは、36ミリ幅のスパナか大型のモンキーレンチで回します。こちら側は逆ネジなので、時計回しで緩めます。
しかし右ワンはフレームに一杯まで締め込んであるだけで、調整等には関係しませんので、もし手持ちの工具でちょうどいいサイズのものがなかったり、固く締まっていて回せない場合は、無理に抜く必要はありません。フレームに付けたままウエスを突っ込んで古いグリスをぬぐったり、パーツクリーナー等で掃除をすれば大丈夫です。
BBシャフトには左右の向きがあるので、どっち向きに入っていたか、抜いた時に刻印の向きなどをちゃんとメモして覚えておくようにします。たいていはチェーン側に線が入っています。
各パーツに付着している古いグリスを灯油とブラシで徹底的に洗浄し、新しいグリスを充填して元通り組み立てます。
フレームに残した右ワンも、歯ブラシなどを使ってきれいに掃除し、新しいグリスを塗りつけておきます。
玉当たりの調整は、シャフトにガタがなく、指で回してやや重たく感じる位にします。クルクル軽く回るようにすると、シャフト単体ではガタを感じなくても、クランクを足で踏み込んだ時にコリッ、コリッと微妙なガタが出る事が多いです。
固定する時はスパナで左ワンが回らないよう保持しつつ、ロックリングを時計回りに締め付けます。この時に左ワンが微妙に外側に引っぱられるので、玉当たりがわずかにゆるくなります。その分を計算して最初は若干きつめに調整しておくのがコツです。
BBシャフトだけではガタの有無がはっきりわからないので、反対側にクランクを仮に取り付け、その都度動かしながらやるとわかりやすいです。
調整が終わったらクランクアームを元通り取り付けます。
クランクとBBシャフトのはめ合わせはスクエアテーパー(四角断面のくさび状)というタイプで、フィキシングボルトに力を加えれば加えるだけジワジワと奥に入ってゆくので、どこまで締めればOKなのか、最初はちょっとわかりにくいものです。
各メーカーの取説を見回してみると、適正な締め付けトルクを30〜50N・m(≒3.0〜5.0kg・m)の範囲で指定しているようです。つまり長さ20センチのスパナを使った場合、端にかけるべき力は15〜25キログラム程度。家庭用の体重計を押してみる事で体感的にチェック出来ます。成人男子なら片手で軽く「グイッ」くらいで十分でしょう。
締め込みすぎると最悪ボルト折れやクランクに亀裂が入る可能性もありますので、力加減にはくれぐれもご注意を。
クランク軸にある保護キャップは必ず付けて下さい。ネジ山が傷ついたらコッタレスクランク抜きが使えなくなり、次回以降のメンテナンス作業が非常に難しくなるからです。
オーバーホール後、クランクの左側だけを外してBBの動きを見てみた映像です。