世のほとんどのオフ車に標準装備されているナックルガード。これは樹脂製のカバーによってハンドルの握り部分を覆い、山道走行時にヤブ枝などからライダーの手を保護するためにあるわけですが、このガード、実は普通の市街地走行でも手の防寒・防雨をしてくれる盾として役立っています。これはオフ車を所有した事のある人なら、実体験としてよくおわかりでしょう。
一方オンロード車では、BMWのGS系や国産一部大型ツアラーなどを除いて、オプション装備としてもあまり見ません・・。
というわけで、本来はスクーター用のキットをわがBandit250セパハン仕様に無理やりくっつけて、ツーリングにおける快適性向上を目指してみました。
まず、グリップカウルの外側を固定するステー(取説では部品番号4番のアウトサイドステー)をハンドルに取り付けます。
キットの説明書では付属の黒いスペーサー(バーエンド)や長ボルトを使うようになっていますが、Bandit250にはイマイチ似合いませんので、現在使っているバーエンドと共締め固定する形をとります。付属のパーツを使ってもいいのですが、何やらむき出しの鉄塊と言った風で目方もやたらと重く、もうひとつカッコワルイのです・・。
共締めの位置からまっすぐステーを出すと、レバーを引いた時の先端と干渉するので、ゆるいS字状に曲げ加工を施し、ステー先端をやや外側に逃がしてやります。このステーは厚さが約3ミリもある鉄板で、腕の力だけで正確な曲げを施すのはちょっと難しいかと思いますので、万力やハンマー等を使ってコツコツやった方が確実です。
右側のステーは前後にワッシャーをかませるなどして、アクセルグリップのスムーズな動きを阻害しないようにしてください。
バーエンド側のステーさえ出来れば、左側グリップカウルはほぼキットの取説どおりに付けられます。
内側ステー(部品番号3番のインサイドステー)をミラーの柱に共締めし、カウルの固定にはキット付属のウエルナットという特殊なゴム製ナットを使って留めます。これは締め込む事でナットの被覆ゴムが圧縮され固定されるもので、一般的な金属ナットのようにガッチリ固定されないので耐振動性に優れています。締め込み加減はボルトの頭が少し出たあたりでOK。あんまり奥まで締め込むとナット自体を潰してしまうので注意。
取説どおりとは言え、微妙な位置調整が必要になりますので、各ステーは最初のうちは仮締めにしておき、位置がきっちり決まってから本締めをします。
さて問題は右側です。こっちは油圧ブレーキのタンクが邪魔でミラーの柱が使えませんので、汎用ステー金具を使い、別途支持部を追加してやります。
ヘッドライト支持パーツの根本にあるボルトを使って汎用ステーを固定し、もう一方の端をブレーキレバーの支点近くまで持ってゆきます。この場合ステーの微妙な曲げによって取り付け位置を決める工夫が要るので、まずボール紙の切れ端などで汎用ステーと同じ大きさの型紙を作り、グリップカウルと現物合わせをしながら曲げるポイントや角度などを決めます。
樹脂製カウルの側にもひと工夫。固定のための穴位置を少しずらして別途開口し、ステーに干渉するエッジ部分もヤスリで削りました。こうやって取り付け位置がよりハンドルに近くなるようにします。
ブレーキレバーの支点ボルトを工夫し、ここにカウルの固定部を共締め出来るようにすればステー追加は必要なくなるかもしれませんが、適当なボルトが見あたらなかったのと、ブレーキの安全性の問題、そしてボルト変更によってタッチが変わるのもちょっといやだったので、今回は手を付けないでおきました。
取り付け後、近所の山道や高速道路を何度か走ってみました。結論から言えば、効果はあるけど下道では実感しにくいって感じです。カウルと銘打ってはいるものの全面投影面積がやや小さめなせいか、やっぱりある程度の速度(60km/h以上)を出さないと、はっきりとした防風効果は感じられませんでした。
一方、高速道路の走行はかなり快適になりました。直接風が当たらなくなった事による手の防寒効果もさる事ながら、袖口からひじにかけてのジャケットのバタつきがほとんど消え、休みなしに100キロ以上走った後の疲労がかなり軽減されたように感じました。
そこでもう少し大きなサイズのカウルなら・・と思うところですが、大型ツアラーならともかくBandit250のような軽快な中型ネイキッドにこれ以上ゴテゴテした付属物を付けるのも気が進みません。そもそもがシンプルなネイキッドなのですから、全体の雰囲気を崩さないレベルとしてはこれくらいが妥当なセンではないでしょうか?
ところで今回はキットを丸ごと買いましたが、補修パーツとして樹脂製カウルのみの販売もされています。
ちなみにパーツ番号は以下の通り。
寒い季節もそろそろ終わり。本格的なツーリングシーズンに向けてハンドルカバーを外そうとしたさい、ちょっと無理な力をかけてしまったため、右手側のグリップカウル支持部がぽっきり折れてしまいました。ここは自作ステーを追加した部分で、取り付け角度の関係で樹脂を削って加工していたのがアダとなってしまったようです。新しいカウルパーツを注文して、今度はもうちょっと強度を確保出来るような工夫が必要でしょう。
このグリップカウルを付けようと思い立ったのは、昨年阿蘇で行ったコーヒーブレイクというイベントにおいて、お友達の乗るカワサキER-6nというマシンに、同じワイズギア製のグリップカウル(旧型)が何の違和感もなく取り付けられていたのを目にしたのがきっかけでした。
この手のカウルキットはたいていバーハンドル車に取り付ける事を前提に設計されるのが常で、Bandit250のようなセパハン車ではクランプを入れ込むスペースが無に等しいため、半ばあきらめていたのです。ところがこのワイズギアのグリップカウルはレバーの支点やミラーを使っているので、これならわがBandit250にも付けられる!と確信を得ました。
グリップカウルの上からハンドルカバーをかぶせてみました。KISS RACING(キジマ)製のナックルウォーマーIIという製品。
この手のカバーはいかにして走行風に耐え、カバー形状を維持するかに設計の要点が置かれていて、型くずれ防止のプレートやテンションベルトが装備されていますが、作者のBandit250では上記の通り装着したグリップカウルが骨格の役目を果たすので、高速走行中でもカバーがレバー類に干渉する事なく、快適な操作空間を維持してくれます。よって、これほど凝った構造の製品でなくても十分役目を果たせると思います。
別付けのグリップヒーターを併用して走ってみたら、冷たい氷雨の降る初冬の阿蘇山上でもまったく平気でした。グローブもちょっと濡れた程度ならカバーの中ですぐ乾きますし、停まって休憩している時より、むしろハンドルを握って走行している時の方が快適に感じたほどです。