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マフラーの脱着

エキパイ

バイクカスタムの第一歩と言えば、マフラー交換を連想する人は多いでしょう。実際供給メーカーの数も、マフラー関連がいちばん多いような気がします。

もっとも交換作業を自宅でやるにしても、マフラーの脱着自体は特に難しい作業ってわけでもないし、わざわざ項目を立てるほどでもないなァと思っていましたが、今回エキパイのネジ穴の開け直しをやった時、ついでに写真もいろいろ撮りましたので、参考までに書いてみます。


必要なもの

新品のガスケット
排気漏れを防ぐためにエキパイとエンジンの間にはさまっているリング状のガスケット。4個で1,000円前後。マフラーの脱着毎に新品交換するのが基本ですが、場合によっては再利用も可能。
耐熱グリス
ボルトの焼き付き防止のための耐熱グリスがあるといいです。ヘッドは高熱になるのでその辺で売っている普通のグリスではダメ。WAKO'Sのスレッドコンパウンド(THREAD COMPOUND)やPermatexのアンチ・シーズ(ANTI-SEIZE)が有名。
六角レンチ(5ミリ、6ミリ)
5ミリはエキパイ側のキャップボルト用、6ミリはサイレンサー固定ボルト用。
メガネレンチ(12ミリ)
サイレンサー固定ボルトを留めているロックナット用。
ボックスレンチ(10ミリ)
場合によってはラジエータの固定を外してやった方がラクです。
その他
軍手や掃除用ブラシなど。エキパイ内部のスス落とし用に古いチェーンがあると便利です。ススが飛び散るので出来ればマスクも。

マフラーの取り外し

サイレンサー側はナットのみを外す エキパイ側ボルト8個を外し 抱きかかえるように降ろす

まずサイレンサー部分の固定ボルトに裏側から入っているロックナットを外しておきます。ただしボルトはそのまま抜かずにおきます。

次にエキパイ側のひし形ホルダーを留めている8本のキャップボルトを抜き、フリーにします。1番シリンダー(つまり車体左側)から抜いていった方が作業上ラクです。

そして4番まで外し終わったら、マフラーの下に足を入れて支えるような体勢をとり、左手でサイレンサー固定ボルトを抜きます。あとはマフラー全体を抱きかかえつつ、エキパイ側の引っかかりをくぐらせるようにして、降ろします。最初にサイレンサー側のナットだけを抜いておく理由は、エキパイ側を先に4ヶ所ともバラした後でサイレンサーの固定を解くと、突っ張っていた支えが一気に抜けて、エキパイ側がいきなり落っこちる場合があるからです。

聞くところによると、エキパイ側のボルトを抜くときはエンジン停止直後でまだエンジンが熱いうちに、手袋をしてヤケドしないよう手際よく回すのがコツなんだそうです。つまりエンジンが熱い状態ではヘッドのブロックも微妙に膨張しているので、冷えている時よりもボルトの固着が起きにくくなるというわけです。

ガスケット 新旧の比較 4つとも交換

エキパイとエンジンの間にはさまっているリング状のガスケットは脱着毎に新品交換するのが基本。これはガスケット自体が潰れる事によって密着度を高め、排気の漏れを阻止するようになっているので、すでに潰れているガスケットではその効果が期待出来ないからですが、この写真(右の黒い方が使用済み)のように全面が一様に潰れるわけではないので、裏返して当たり面を変えれば1回くらいなら再利用出来たりします。

取り付ける時は片面に耐熱グリスを少量塗って、エンジン側にペタッと貼り付けておいてからエキパイをはめ込めば簡単。

マフラーの掃除

エキパイ内部のスス ブラシで掃除 チェーンも有効

エキパイの内部はススでかなり汚れています。場合によっては数ミリほどもススが層をなしている事もあるので、よく掃除しておきましょう。この写真では撮影の都合で装着時のように立てていますが、実際にはサイレンサーを上にして、エキパイ側を下にした状態で壁か何かに立てかけてやった方が、ススをマフラー内部に落とし込まずに済みます。

この作業は出来ればマスクをして、風通しのいい庭先でやってください。真っ黒いススの微粒子がワンサカ出てきますから、何も装備せずにゴシゴシやると、その後2〜3日は黒いハナクソが出続ける事になります。

カバーを開けるボルトは3本 中は真っ黒!

サイレンサーの後端にあるレンコンみたいなカバーは取り外せます。ここもついでに掃除しておきましょう。中には水滴がたまるらしく、下に水抜き穴があります。Banditのマフラーは外側こそステンレス製ですが、サイレンサーの内部パーツは鉄製なのでけっこうサビが出ているはずです。

Bandit400の純正マフラー分解起きろ!バンディット

固定ボルトは写真のように1つおきで3本のみ。しかしこのボルトは全長の割にはほんの少ししか噛み込んでおらず、場所が場所だけにサビや高熱で固着している場合もあると思いますから、固いのを無理に抜くとネジ山を痛めてしまうかもしれないので、きついなぁと思ったら無理に抜かなくてもいいです。

サイレンサーのすき間?

発見したすき間

作者も久々にこのカバーを開けてみたら、なんと排気ノズルの根本に微妙なすき間が出来ていました。下には金属のクズが溜まっていましたので、たぶん経年劣化で溶接盛りが剥がれたのでしょう。カバーの中はススだらけで、このままエンジンをかけるとすき間から排気がポコポコ出ているのがわかります。音もちょっとウルさ気味でしたが、カバーを締めると出口がなくなるので音も普通に収まります。でもちょっと気になるので、後日マフラーパテで埋めるか、どっかの板金工場に乗りつけてチョイチョイと溶接して貰おうかなと思っています。


マフラーの取り付け

取り外したエキパイのボルトはきちんと汚れを取って掃除したあと、ネジ部分に耐熱グリスをよく塗り込んでおきます。これをやるだけでも、次回の脱着時にボルトが焼き付いて取れなくなったという、泣きたくなるようなトラブルにぶつかる可能性がぐっと下がります。マフラー脱着なんてそう頻繁にやる作業ではないですから、その都度新品のボルトに替えてやってもいいくらいです。高価なブランド品でなくても純正モノで充分! さらにネジ穴にはタップを通し、クリーナーやエアーブローで念入りに掃除をやっておけば完璧でしょう。

ステンレス製のボルトは純正の鉄ボルトと違ってサビない(正確にはサビにくい)のがメリットですが、ステンレス自体に粘る性質があるので、無理な締め方をするとネジ穴の中で焼き付きを起こし、回している途中でガッチリ固まってしまって、それ以上締める事も抜く事も出来なくなる事があります。ステンボルトの焼き付きは本当に厄介で、結局折るしかない場合がほとんど。特にホームセンターなどで売っている安価なボルトの中には品質や精度がよくないのが混じっているので、十分注意してください。

マフラー取り付けは取り外しと逆の順序でやります。フランジの締め付けは2本とも均一に締めてゆき、さらに4気筒を均等にゆっくり締めます。1ヶ所のシリンダーだけ先にギュッと締め込むと入りが不均等になって、パイプやガスケットに変なストレスがかかったり当たり面が斜めになったりします。一応の締め付けトルク指定は80-120kg・cmですが(参考:締め付けトルクについて)、ここのホルダーの座面は半分斜めになっていたり、各気筒で微妙な穴位置のバラツキも大きいので、あまりこだわらず、普通にクイッと締めておけばいいと思います。緩んだら増し締めすればいいですしね。ちなみにブレーキキャリパーにある小さなエア抜き用ブリーダーボルトの締め付けトルク指定が60-90kg・cmですから、これと比較してもそれほど強く締めなくていい事がおわかりでしょう。あまりきつく締めすぎるとボルトの頭が斜めに曲がって変形する事があります。

最後にサイレンサー部分の固定ボルトをきっちり締めつけて、作業終了!

このようにガスケットを新品にし、ススの掃除をしてきちんとボルトを締めつければ、これまであった微少な排気漏れもなくなって、Banditのクセとも言われる低回転域の弱さが若干改善される事もありますから、高価な社外マフラーへの交換ばかり考えずに、たまにはこういった基本的な部分にきっちり手を入れてみてはいかがでしょう?

迫力の排気音は誰のため

「バイクを買ったらとりあえずマフラー替えて、それから・・」なんて会話はバイク好きな人たちの間ではごく普通に交わされていますよね。どうかするとまだ乗り出してもいない納車前からさっさと社外品に付け替えてしまう人もいます。

VRX

作者もBandit250の前に乗っていたホンダのVRXというバイクを買ったとき、とりあえず最初に替えたパーツはマフラーでした。迫力の重低音やパワー強化、それにオールステンレスの外観の美しさに惹かれて、10万もの大金を投じたのです。

確かに最初はすごく気持ちのいいものでした。道ゆく人たちが作者のバイクを振り返る、その様をミラーでチラッと見るたび、メットの中でニヤニヤしていました。しかしそのうち迫力の音にも耳慣れしてしまい(そりゃ毎日のように乗っていれば当然です)、取り付け時の新鮮味がどんどん薄れるにつれて、逆に細かいビリつきや排気漏れが目につくようになってきました。金属製のマフラーと言えど、熱や振動をうけてどんどん劣化消耗していくのです。そしてついにバイク自体を手放す段になって、売却のためノーマルマフラーに戻した途端、あまりの乗りやすさとストレスのなさにビックリ!あの10万以上もした社外マフラーは、迫力の音やトップエンド領域でのわずかなパワーアップと引き替えに、日常的に一番多用する中低速域の美味しさを切り捨てていたわけです。でも交換した当初は不思議とその差に気づけなかったもので、やっぱりスタイリングや大きな排気音に感覚が誤魔化されていたのでしょうか?

一般的なライダーがマフラー交換をしたがる動機は、スタイリングをよくしたい、軽量化,そしてやはりいい音(=目立つ音)を出したいから、というのが大きいと思います。つまり自己顕示欲の顕れに他ならないでしょう。それ自体はむしろ健康的な事だと思いますが、度が過ぎる排気音はもはや騒音公害であり、乗っているライダー以外の大多数の人たちにとっては迷惑以外の何物でもありません。当のライダーはバイクとともにサッサと走り去ってしまうので、人々の罵声や苦々しい表情を見ずに済んでいるだけです。

JMCAの音量規制dB値をクリアしているからいいだろう、なんてのも、ハッキリ言って警察相手の逃げ口上にすぎないでしょう。ウルサイものはバッジがあろうがなかろうが耳障りでウルサく感じます。人間の耳や肌はデジベル計の針よりもずっとナイーブに反応するものですから。

まあ社外マフラーにもピンからキリまでいろいろありますし、特性も様々ですから、その辺は各ユーザーの判断にまかせるとして、現在の作者は完全にノーマル派です。何しろBanditの製造元がこれ専用に設計・製作した一品ですから、相性が悪いはずがありませんよね。スタイリングもすごく決まっていると思います。溶接の後処理など、ちょっとばかり仕上げは雑ですが・・。もっともこれがステンレス製のパイプでなく、サビの目立つ昔のような鉄製のマフラーだったら、社外品への交換もちょっと考えたかもしれませんが。

1/1000秒を争うレースの現場ならともかく、一般公道で騒音源となるような改悪だけは、バイクを愛する者としても避けたいものです。