ブレーキフルード(ディスクブレーキに使われているオイル)の確認窓を最近見た事がありますか?後期型は乗員側に窓がありますけど、初期型はバイクを降りて正面に回らないと見えません。
「乗り始めて何年か経つけど、そういえば換えた事ないなぁ」という人もいるでしょう。煮しめたように茶色くなったブレーキフルードでは、ブレーキの性能は決して満足に発揮出来ていないはずです。
とはいえブレーキは重要保安部品の最右翼。車検時の点検では整備士の資格が必要とされる(※)ほどです。走行中エンジンがグズっても大して危険はないけど、ブレーキトラブルは死に直結します。ですからご自分で作業される時は、くれぐれも用心する事です。作業そのものは難しくありませんが、自信がなければバイク屋さんにお願いした方が精神衛生上いいと思います。
(※)現在では規制緩和され、個人所有のバイクを整備する場合は資格は不要です。
プラスチックや金属の塗装面にブレーキフルードが触れると、表面を激しく侵してボロボロになってしまいます!でもすぐに水で流せば無害になりますから、作業中は必ず水をはったバケツをそばに用意しておきましょう。
まずフロント側からやります。
バイクを安定した場所に停め、サイドスタンド状態で、ハンドルを左いっぱいに切っておきます。こうするとフルードのタンク部分が一番高くなり、作業もやりやすくなります。
次にブレーキキャリパーにあるブリーダーボルト(エア抜きをするための小さなノズル)のゴムキャップを外します。そしてブリーダーボルトの六角部分に8ミリのメガネレンチをはめ込み、先端に透明ホースをしっかりつなぎます。ホースの端っこは空き缶に入れますが、フルードが流れやすいよう空き缶の方をやや低くセットします。
長年さわってないブリーダーボルトは根本が錆びつくなどして回りにくくなっている場合があります。この時点で軽く回して確認しておきましょう。回しすぎると余計な空気が入る事があります。
ハンドルにあるマスターシリンダ・リザーバータンク(ブレーキフルードが入っている窓付きの四角い箱)のフタを開けます。フルードが飛び散ってもいいように、周囲にはウエスをしっかり敷いておきましょう。金属のフタの下には、もう一段ゴム製のダイヤフラム(伸縮性のあるヒダのついたゴムカバー)があります。両方ともゴミがつかないよう、きれいなウエス等の上に置いておきます。
長期間換えてなかった場合はリザーバータンクの底にヘドロ状のゴミがたまっている事がありますので、麺棒などでつついて浮かせておきます。
そしてタンク内にある古いフルードをキッチンペーパーで吸い取って除去します。底にたまった汚れはこの段階で奇麗にぬぐっておきましょう。
長期放置していた車体では、ダイヤフラムの周囲に結晶のような黄色い固まりが出来ている事があります、きれいに取り除き、水洗いして乾かしておきます。
では、入れ換え作業に入ります。
まず、空っぽになったタンク内に新しいブレーキフルードを基準ラインまで入れておきます。
Bandit250はFブレーキキャリパーが車体左側にありますので、作業者は車体正面または前輪の右側に立ち、右手でキャリパーのメガネレンチを、左手でFブレーキレバーを操作出来るような体制をとります。
1から4を繰り返して、どんどんフルードを排出していきます。数サイクルごとにタンクの中のフルード量を確認し、底が見えかけたら新しいフルードを足します。
作業中にタンク内のフルードが底をつくと、シリンダ内にゴボゴボっと空気が入り込んでしまいます、レバーの手応えがボヨンボヨンと軽くなるのですぐわかるはず。これを完全に抜くのもまた面倒ですから、タンクをその都度ちゃんと確認しながらやりましょう。2人で分担してやるとスムーズに作業出来ます。
そのうち空き缶に入る透明ホースの色が茶色から透明になってきたら、ブリーダーボルトを締め、タンクの基準ラインまでフルードを満たし、フタを元通りにします。
そのあとキャリパーとタンクやその周囲にバケツの水をかけて軽く洗い流し、作業完了です。
上記はマニュアルにも書いてある正統派の注入方法。でも1人で作業するときはレバー操作をしながら同時にブリーダーを開け閉めするのは大変ですから、最初のうちはブリーダーボルトを開けっ放しにしておき、ブレーキレバーだけをガンガン動かしてフルードを継ぎ足しながらやってもいいです。フロント側はタンクと高低差があるせいか、これでも結構抜けていってくれます。ただし透明ホースの取り回しによっては、いったん出たフルードや気泡が逆流してくる事もありますから注意しておいてください。
ホームセンターの熱帯魚コーナーで売っている、エアポンプ保護のための逆流防止弁をブレーキフルード排出ホースの間に挿入しておけば、フルードが逆戻りしないので1人で作業するときに便利という話を聞いたので、さっそくやってみました。
逆流防止弁が290円、ホースが140円。わざわざホースも買ったのは熱帯魚用の弁のノズルがBanditのブリーダーボルトの直径よりもかなり細かったので、1本のホースを切った間に入れる事が出来なかったからです(お店によってはもっとデカイのが売っているかもしれません)。
実際にやってみて、確かに逆流阻止効果はありました。でもこれはあくまで水の逆流を防ぐための器具で、わずかな空気(気泡)はチョロチョロと抜けてしまうようです。作業者がボサーッとしてなけりゃ問題ないでしょうが、あまりこれに頼りすぎるのもどうかなって印象ですね。使わないよりはマシという程度に考えておいた方がいいでしょう。排出ホースの取り回しを逆Uの字にしておけば、頂点部分に気泡がたまってくれるので、キャリパー内部へのエア逆流はとりあえず抑制出来ると思います。
現在のフルードのままでホース内に残留したエアを抜きたい場合は、ブレーキキャリパー側のブリーダーボルトは締めたままでブレーキレバーを何度も何度も握れば、上からジワジワと抜けてきます。これは軽い空気が上に昇ってくるからで、必ずサイドスタンドとハンドル左いっぱいの状態でやります。
ノーマルのホースはともかく、ステンメッシュホースに交換してある場合はホース自体の弾力性がほとんどないせいか、なかなか抜けてくれないので根気が必要。すぐに済ませようとはせず、1日かけるくらいのつもりでゆっくり取り組んだ方がいいです。一晩置いて、エアーが自然上昇してくるのを待ってから翌日再トライしてもいいです。
リア側も基本的には同じです。相違点と言えば、リアのキャリパーは対向ピストンなので、ブリーダーボルトが表と裏の2ヶ所にある点です。でも手順は同じ。片側ずつ同様の作業をやるだけです。
フロント側の作業はサイドスタンド状態でやりましたが、リア側の場合は裏側のブリーダーボルトがリアホイールの位置によって回しにくくなる事がありますので、ホイールが自由に動かせるようにセンタースタンドで立てた状態でやった方がいいです。
「表だけでもフルードはほとんど入れ替わるわけだし、まぁいいか〜」と、表だけやって終わりにしてしまう人がいますが、後で泣きを見ないようにきちんとやりましょう。